パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

・夏の花・植物

散歩しながら、香りのある「夏の花」を集めました。香料になるものも、ならないものをあります。

処暑初候 綿柎開 (わたのはなしべひらく)

処暑初候 綿柎開 (わたのはなしべひらく) 立秋を過ぎ、処暑(しょしょ)となりました。心なしか日暮れも早くなり、セミの声響く暑さの中にも秋の気配が漂ってきます。 ワタの花はハイビスカスによく似た形で、7月中旬から9月にかけて次々と咲いては萎み、結…

風蘭(ふうらん)のお花が咲きました!Vanda falcata

風蘭(ふうらん)のお花が咲きました!Vanda falcata 風蘭は香りの強い蘭です。 これは2年前の冬に植物愛好家の方から頂いた鉢で、ここまで育てるのに20年かかったとのこと。 見た目はそれほど大きくないのですが、頂いたその年は数十輪の花が一斉に咲いて、…

大八重くちなし gardenia

大八重くちなしの香り 6月の蒸れた空気の中に、クチナシの香りの特徴である甘いクリーミーなラクトンが匂ってきました。 まだほの明るいアトリエからの帰り道、ビルの植え込みに大八重梔子(おおやえくちなし)の白い花が浮かんでいます。 この香りは夏の訪れ…

6月のサカキの花, 榊, Cleyera japonica

サカキの花の香り 香りの第一印象 最初はビターでアニマル プチグレン(petit grain)のようなほろ苦いウッディ感、オレンジフラワー(orenge flower)のようなオリエンタル感、インドール(indol)やアンバー(amber)調のアニマルが感じられます。 インドールは防…

栴檀(センダン)は双葉より芳(かんば)し?

栴檀(センダン)は双葉より芳(かんば)し? 結論から言うと、 ①栴檀(センダン)と呼ばれる木には白檀(びゃくだん)と楝(おうち)の二種類がある ②ことわざの栴檀(センダン)は白檀(ビャクダン)のことを指す ③白檀は双葉の時は匂いがない のです。 ち…

朴(ほお)の花咲く ハナヒラク/香りの記憶、心の旅②

朴(ほお)の花咲く ハナヒラク/香りの記憶、心の旅② 新宿御苑の今 おそらく今、新宿御苑には巨大な「朴(ほお)の木」が満開だと思います。おそらく、というのは今は自粛のため閉園で中に入ることはできないからです。 恋人に会えなくて寂しいような気持ち…

紫陽花 あじさい / Hydrangea macrophylla

紫陽花が咲いています アジサイの花。梅雨の合間の薄日の中で、シジミチョウが群れて羽根を休めているようです。 蝶と違うのは、手を触れようとしても一斉に飛び立っていかないところ。 花は略奪者にも従順に見えます。

サカキ,榊,Cleyera japonica

サカキ,榊,Cleyera japonica サカキの花 白い小さなお花が枝にびっしりと咲いています。こうして拡大してみると、一見オレンジフラワーにも似ているこの花、神棚に飾る「サカキ(本榊)」 のお花です。 ジャスミンをサッパリさせたようなクリーミーな匂いが…

タイサンボク 泰山木(Magnolia grandiflora)

タイサンボク 泰山木(Magnolia grandiflora) 新宿御苑にタイサンボク 、泰山木 (たいさんぼく) が咲いています。 20メートルにもなる大きな樹で、その巨大な白い花は背の高い上の方に咲くため、気が付かない人も多いようです。 タイサンボクは常緑広葉樹…

シクラメンの香り 卒業 Cyclamen persicum

インターン卒業! 昨年4月からアトリエにインターンで来てくれていた大工原さんと高橋さんの二人がこの3月、日本工学院蒲田専門学校を卒業しました。 就職も決まってパルファンサトリのお仕事も3月で卒業です! 彼女たち二名を含めたチームの研究テーマは「…

百日紅(サルスベリ) Crape-myrtle

横なぐりの雨に傘を短く前にさし、足元を見て歩いていると、濃い赤い花がグレイの濡れた石畳の上に散って、ちょっとモノスゴイようにきれい。 見上げれば、台風の雨と風に大きく揺れたサルスベリの枝から、まき散らされたものと思われる。 薄暗い空に鮮やか…

フウラン、風蘭、富貴蘭、Vanda falcata

フウラン、風蘭、富貴蘭、Vanda falcata そのお客様から、「風蘭(ふうらん)」という、良い香りのするお花の話は以前から伺っていた。 「こんど花の咲く時期に持ってきますよ」とおっしゃって、6月のはじめにお預かりした時は、まだ緑の細い葉と、細いうど…

新宿御苑 Shinjukugyoen

新宿御苑 Shinjukugyoen 森が必要。 そも散歩に行こうと思ったときから、ケアは始まっていたのであり、森に一歩踏みこめば、その安らぎにすっぽりと抱えられ、心の荷物をゆだねてしまえる。 雨上がりの森の小道、せせらぎの小さな音ともつれあうように、細か…

ヤマモモの香り 楊梅皮 山桃 Morella rubra

久しぶりの休日、本屋からの帰り道、シャラシャラという水の音が聞こえた。ビルの敷地を切り取るように造られた、公園のせせらぎに惹(ひ)き寄せられる。しばらくたたずみ水流音に耳を傾けていると、頭の中も洗い流されるような感覚があり心地よい。 小流れ…

クスノキの花 楠木 Cinnamomum camphora

雨上がり、新緑の初夏の道を歩いていると、青臭い強い匂いが、細かい花と一緒に降ってくる。 このあたりは大きなクスノキの樹が多いので、いっせいに咲いているのだろう。 この香気のベースにある匂いに、なにか懐かしいものを感じていたが、それは昔の洗濯…

スイカズラ、忍冬、ハニーサックル honeysuckle

スイカズラ、 忍冬、ハニーサックル。でも言葉の音が好きなのは、スペイン語のマドラセルバ(madreselva)。 昔すんでいた家の庭にはぼうぼうと咲いていたが、久しぶりに身近でみて懐かしい想いにふける。 流れるような茎のラインがきれい。 はじめつぼみだ…

ツルニチニチソウ 蔓日々草 Vinca major

ツルニチニチソウの青い花がこの時期咲いている。公園の植え込みや庭のフェンスなどに、濃いグリーンを背景に、パッチリとした藍色が映えてきれい。1輪をアトリエに飾ってみた。最近はこんな野の草を入れるのが気楽でよいと思っている。ツルニチニチソウ,蔓…

夜咲く花,夜香木(ヤコウボク),ナイトジャスミン,Cestrum nocturnum

土曜日の夕方、スクール生のMさんが、家から夜香木(ヤコウボク)を切ってきてくれた。家には白い花を中心にした庭があり、香料植物も多いとか。お母様の丹精だそうである。この夜香木の株が大きくなり、かなり生い茂っていてるそうで、伸びた枝に次々と花が咲…

夏の庭 ミソハギ 禊萩 Shinjuku Gyoen National Garden

夏の庭 ミソハギ 禊萩 Shinjuku Gyoen National Garden 静かな、夏の新宿御苑。フランスから戻って1ヶ月あまり、久しぶりに訪れてみる。 代々木から六本木にアトリエを移してしまったために、ちょっと通勤の途中でより道をして新宿御苑を散歩する、というわ…

シャガ 射干 Iris japonica

シャガ(射干)、胡蝶花ともいう。 小さなアヤメの仲間で、日陰でも、手入れしなくてもよく育ち増える。種子はできず、地下茎で増殖するので、皆クローンのようなものである。 群れて咲く様子は、まさに群舞する蝶のごとし。

ハンカチノキ,Davidia ivolucrata

ひらひらと「ハンカチの木」が揺れている。 今年はもう終わりかけで、最後の2-3枚が残っているだけ。下には散ってしまったハンカチの木の白い苞(ほう)がたくさん落ちている。 風がやむと、なんとなくだらりとして、「これ、このだらしない感じ、なんだ…

五月の夢 YUME

羽をもたぬ蝶、アヤメ 「かの歌女もし我心に協《かな》はば、我はこれを贄《にへ》にせんといふ。(アンデルセン_即興詩人/鴎外訳)」 森は神域 木は神殿 鳥の声は神楽 梢に渡る風よ さやけし音は祝詞(のりと) 私は巫女

フェンネル fennel

フェンネルはウイキョウ(茴香)、フヌイユ (fenouil)ともいう。1~2メートルほどになるセリ科の一年草。羽毛のように広がる細かい葉をもち、黄緑色の細かい花が咲いた後、種子をつける。 消化促進、消臭などに効果があり、香辛料・食用の他、薬用、化粧品…

ハナヒラク、Hana Hiraku ,朴(ほお)の木の葉③Magnolia obovata

朴(ほお)の木の学名はMagnolia obovata、(マグノリアオボヴァタ) オボヴァタというのは、ラテン語の「倒卵形」という意味である。 卵を逆さにしたようなこの大きな葉の形から学名は由来している。 この楕円の葉は30~40センチあり、比較すればこの木の雄…

ハナヒラク、Hana Hiraku ,朴(ほお)の木の花②

ハナヒラク、Hana Hiraku ,朴(ほお)の木の花② 初夏に咲く朴(ほお)の木の花。 子供の頭くらいはあるこの巨大な花は、 崇高(すうこう)と言ってもいい。 遠くに木の姿が見えるころから、香りはすでに届いている。 あたり一帯に拡散しているのだ。 しかし…

花とにおい 朝顔 ヒマワリ チューリップ Ipomoea nil

すっきりとして飾りがなく、冴えた藍色が大変美しい朝顔の花。 夏休みの宿題といえば「朝顔の栽培記録」、というほど小さいころからなじんだ花だ。 アサガオにしても、ひまわりにしろチューリップにしろ、シンプルな形と特徴が子供でも絵に書きやすい。 その…

ナンバンギセル(南蛮煙管)Aeginetia indica

「野辺見れば尾花がもとの思ひ草かれゆく程になりぞしにける 和泉式部」 尾花はススキ、思ひ草とは「ナンバンギセル」のことで、秋の歌である。 南蛮煙管(ナンバンギセル)はススキの根に寄生する植物で、うつむき加減に咲く姿が、物思うさまに例えられ、古…

ガガブタ Nymphoides indica

ガガブタという。 音だけ聞くと、身も蓋もない呼び方。 しかしその漢名はというと「鏡蓋」で、葉が鏡(かがみ)の蓋に形が似ているからだともいう。 ほんの小さな目立たない花なのだが、よくみると花びらの周辺が細かく裂けており、まるで木綿の布地のヘリを…

ホシオモト(星万年青)、ユーコミス、パイナップルリリー Eucomis

ホシオモト(星万年青)、ユーコミス、パイナップルリリーという。 確かに、星のようなつやっとした花。 オモト(万年青)のように、しっかりした葉が根元から伸びている。 淡い黄緑の中央にピンクがちょっぴりさして、おしべが冠のよう。 パイナップルリリー…

オニユリとクロアゲハ Lilium lancifolium

クロアゲハは前翅の褄(つま)から大きく羽ばたいて、後翅はその動きに従っている。アオスジタテハに比べてゆったりとした動きである。 蝶は気まぐれに飛んでいるようだけれども、蝶の道は決まっている。それゆえ花は待っている。 オニユリは下垂した花を反…

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