ハナヒラク、Hana Hiraku ,朴(ほお)の木の花②
初夏に咲く朴(ほお)の木の花。
子供の頭くらいはあるこの巨大な花は、
崇高(すうこう)と言ってもいい。
遠くに木の姿が見えるころから、香りはすでに届いている。
あたり一帯に拡散しているのだ。
しかし私は近づき、(触らずに)カップを抱えるようにして、中心部に顔をうずめる。
咲き初めと、花の終わりの香りは違っている。
始めはメロンや熟れたベリーのにおいがする。
そして少しサリチル酸のようなクールな匂い、
そしてハーバルで力強い辛い香りもある。
やがてたっぷりとしたクリーミーな花の香り。
古い花はアニマリックな重さも出てくる。
草花の可憐な、触れなば落ちんという風情と対極に、
木に咲く花は他をよせつけない、気品がある。
木に咲く花は他をよせつけない、気品がある。
私は、たやすくは手折れない、木の花になりたい。
この花のどこに香りがあるのだろう。
蕊かしら、花びらかしら。
落ちてきたばかりの大きな花びらを食べてみる。
きゅうりのようなグリーンの味と、ラクトニックなゴムの味。
朴の木の花の蕊(しべ)は野性味がある。
大きな蕊は、二段ロケットのように、雄蕊、めしべと時間差で開いてくる。
自家受粉を避けるために、時期をずらしてが成長するという。
そのあたりにも、花のにおい立ちの変化の理由があるのかもしれない。
続く
朴(ホオ)の木: 学名:Magnolia obovate 日本特産種
大木になると幹が直径1メートル、高さが30メートルにもなる落葉高木。朴(ホオ)の木の大きな葉に、味噌や餅を包んで焼いた朴葉みそ、朴葉餅や、皿として使うなど、日本では昔から生活に根ざした歴史があります。5月頃にクリームホワイトの20センチにもなる大きな花を枝先に咲かせ、その香りは風に乗って遠くまで届きます。