タイサンボク 泰山木(Magnolia grandiflora)
新宿御苑にタイサンボク 、泰山木 (たいさんぼく) が咲いています。
20メートルにもなる大きな樹で、その巨大な白い花は背の高い上の方に咲くため、気が付かない人も多いようです。
タイサンボクは常緑広葉樹。一年中、濃い緑の固い葉に覆われているのですが、この時期に古い殻を脱ぎ捨てるように葉を落とします。
冬でも茂り、樹高はとても大きくなりますので、広い校庭や公園でないと影が部屋を覆って暗く感じてしまいます。
最近では、お庭で育てやすい「ヒメタイサンボク」という小ぶりの園芸品種が好まれているようですね。
タイサンボクの香り
タイサンボクの花に近づくと、レモンのような爽やかな香りがしますが、よく嗅いでみると、まだ未熟な固いメロンのようなグリーンの香りが奥にあり、ほんの少しゴムのようなラクトニックな香りもします。
遠くまで漂う香りが甘くクリーミーなのは、シトラスの香りは先に揮散(きさん)して、重い方がいつまでも残って風に乗ってくるからでしょうか。
タイサンボクによく似た朴ノ木(ほおのき)の花は少し早く5月に咲き、もっと熟れた甘いフルーティでクリーミーな香りです。
時期をずらして両方を嗅ぎ比べるのが毎年楽しみです!
花の生涯
地面には、葉とともに枯れたはなびらも落ちています。
純白の花は、2日目には花びらの縁(へり)が黄ばみはじめたと思うとすぐに、茶色いレザーのようにくったりと撚(よ)れて、バサリバサリと地上に散ります。
それでも大きな樹には次から次へとつぼみが開き続けますので、遠目には長く咲いているように感じます。
ひとつの花の寿命は短くても、花の時期は長く、開花の毎年の繰り返しを思えば、植物というのはなんて気が長い日々を生きているのでしょう 。
葉も花も木さえも、やがて土にかえり、気体になり、雨になって自然の営みの中に組み込まれる。
花の命は壮大な営みのひとつだと、森を散歩するたびに感じるのです。
►朴の花 「ハナヒラク」メーキングストーリー全8話