パルファン サトリの香り紀行

調香師大沢さとりが写真でつづる photo essay

オニユリとクロアゲハ Lilium lancifolium

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クロアゲハは前翅の褄(つま)から大きく羽ばたいて、後翅はその動きに従っている。
アオスジタテハに比べてゆったりとした動きである。
 
蝶は気まぐれに飛んでいるようだけれども、蝶の道は決まっている。
それゆえ花は待っている。
 
 
オニユリは下垂した花を反らせて、「さあ」とばかりに蕊を剥く。
アゲハは知らず、その長い後翅に花粉をつけて花を巡る。
 
 
時間は止まっているのか、さかのぼっていくのか。
汗が胸を伝い、影は少しずつ短くなり、やがてユリに飲み込まれて消える。
 
 
太陽はてっぺんにいる。
 
 
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そうだこんなふうに、ひと気のない野原で、夏の蝶に出会うときはいつも、人の一生について考える。
 
 
アゲハは、自分がさなぎなのか蝶なのかは知らない。
朝が来て夜が来て、また朝が来る
さなぎの死は蝶の誕生で、蝶の生はどこまでが夢なのか。
 
忙しければ、時間が心を責め立てて、
羽がなければ、蜜をくちにすることは叶わない。
 
感動がなければ、心は、死にかける。
 
 
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照りつける夏の野原から林へいけば、そこはひんやりとした湿原。
巨樹もまた、地上へと足を伸ばして息をする。
 
 
 

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