「野辺見れば尾花がもとの思ひ草かれゆく程になりぞしにける 和泉式部」
尾花はススキ、思ひ草とは「ナンバンギセル」のことで、秋の歌である。
南蛮煙管(ナンバンギセル)はススキの根に寄生する植物で、うつむき加減に咲く姿が、物思うさまに例えられ、古来、和歌の中では「思い草」と呼ばれた。
花だけがいきなり立ち上がって咲くように見える。
不思議な植物である。
「思ひ草」の季語は秋であるため、秋に咲くような気がしているのだが、新宿御苑では、7月中旬には咲き始め、8月の半ばには終わってしまう。
蒸し暑さに今日は白い木綿の夏の服を来て出かけたが、すでにして季節遅れの感がしたのである。
季節の先取りは、ファッションだけではない。
和歌の秋も、体感より早くやってくる。