パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

母の茶道⑦ 日本陶芸倶楽部 Pottery

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この志野(しの)のお茶碗は、古いものの写しではあるが母の作品である。
 
「志野の茶碗は60歳を過ぎて使うもの、と言われたものだ。今はそんなことあまり気にしないみたいだけど・・・」
 
そういいながら、母は朝のお茶をたててくれた。
 
 
-若い頃には似合わなくて、年を取ってからこそふさわしいもの。-
 
そういうものが、この世にはあるというのが、とても素敵なことのように思える。
 
 
 

私の小さい頃は、母はいろいろなお稽古ごとをしていて、その中の一つに陶芸があった。


原宿駅の近く、東郷神社(とうごうじんじゃ)のそばにある「日本陶芸倶楽部(にほんとうげいくらぶ)」の正会員を長くしていた。
 
私が言うのも生意気なのだが、母は素人ではあるが、作品にはなかなか洒落たものがあるし、それを日々使って、自分で楽しんでいるのがとてもいいと思う。
 
 
昔は陶芸倶楽部の建物にエレベーターがなく、足の悪い母は上の教室まで登るのが大変だということで、80を前に辞めてしまった。
 
それからだんだん会員の年齢層が上がって、今ではエレベーターも出来たらしい。
 
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上の写真はまた別の志野茶碗。
 
こちらは、同じ会員仲間であった、当時の出光(いでみつ)の社長、出光昭介氏の作品。
 
実業家であって本職の陶芸家ではないが「出光さんは玄人(くろうと)はだしだった」とは母の弁。
1989年に母が購入したものである。
 
 
毎年、日本陶芸倶楽部のチャリティー展示会が日本橋三越で開かれ、
気に入って買ったようである。
 
母も義理で出品していたのだそうが、せっかく苦労して作ったものが売れてしまっては困るので、
「売れないように、売れないように」と願っていたそうである。
 
残れば最後は自分で買う。だから、あまり値段が高くつきすぎても困るとか?なんとかかんとか。
ややこしいお稽古の世界。
 
 
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志野には、荒々しい作風のものもあるが、これはふっくらとして優しいところが、少し枯れた女性の手には似合うような気がする。
 
 
 
 
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