パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

ベッドフレグランス

090302ベッドフレグランス.JPG

24歳のその娘は、普段くたびれたジャージを着ているし、ブランドのバックなんか持ち歩かないのでそうは見えないが・・・ 粋な生活をしている。

 

 

髪にねぐせがついたまま出歩いていても、爪の手入れはおこたらず、目黒の2LDKのマンションはいつもこざっぱり。

特に、睡眠にかけるこだわりがいい。シーツは白。麻、綿、シルクと、ウォーク・イン・クロゼットにきちんと積み上げられ、「明日の予定で決まる今宵のありかた」によって選ばれる。

びしっとシーツをかけた後、今夜のコロンをパパパッとシーツに吹き付けて、ベッドに滑り込む。
香りがあれば、何も考えないですむ。思考がストップしてリラックスする。「寝る前あれこれ考えるのは、リラックスできていないってことだから」彼女が言う。

 



「僕はね、苔 (こけ) の香りがやすらぐんだな」
病院に勤める独身の彼は、帰りが遅い。家に帰ってシャワーを浴びて、「さあ寝るぞっ」というときに、胸元にシュッとコロンを吹いてベッドに入る。
清潔な枕に横顔をうずめるうち、やがてふわふわと香りがあがってきて、「うー、一日が終わったー」という気分で眠りにつくらしい。

苔の香り・・・?そのものではなく、シプレーと呼ばれるしっとりと落ち着いた香水のタイプのことを指している。どんな香りがしっくりするかは、その人固有のもの。 



アロマセラピーもかなり浸透して、「あぁ、知ってる知ってる、ラベンダーの精油は、ぐっすり眠れるんだよね」という言葉もよく聞かれる。

ちょっと難しく言うと、ラベンダーの香りを構成する物質が、脳の縫腺核という、睡眠をつかさどるところに働きかけ、セロトニンを分泌させるから、の説があり、他に、びゃくだん、カモミール、マジョラム、ネロリなどの天然香料も、鎮静効果があるという。

でも?もし嫌いなにおいと感じたら、はたして理屈だけで眠れる?


好きな香りに触れたとき、人は思わず深呼吸してしまう。それは、そのまま知らず気持を和らげる。
だから、一人で眠るかぎりにおいて、セオリーは無い。"わたしの、お気に入り"がいい。

そして記憶が香りを彩り、香りが思い出をあふれさせる。離れて暮らす恋人同士が、たがいの香水に包まれて眠れば、きっと夢で会えるかも。ベッドフレグランス。今夜あなたはどんな夢を見るの?

 

 

 

Copyright © PARFUM SATORI All Rights Reserved.