パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

バスフレグランス

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お花屋さんに勤めている友達のバスタイムは、この職業ならではの贅沢なもの。

 

バラのアレンジをたくさん作る日には、作業中、花首が折れたりしてロスがでる。それをどっさりもらってきて、バスタブに浮かべるのだそうだ。


大小さまざまなバラの中につかっているうちに、つぼみがお湯の中でゆっくりと開きはじめ、体のこわばりも一緒にほどけていく。

手は荒れるし、かなりの重労働、みた目より厳しい花の仕事も、「それだけは役得だな」



そんな恩恵のない私達も、精油(天然の植物性香料)を使って、さまざまな香りのお風呂を楽しめる。
最近ではいろんな店にたくさんの種類がそろっていて、私がアロマセラピーの店をやっていた頃と違い、入手が簡単になった。


例えばちょっと奮発して、「金」より高価なバラの精油。でも、わずか1ccが花1500輪分にもあたるので、一滴バスタブに入れればもう充分。それに、美容効果も高く、女性特有の体の不調もやわらげるので、使ってみる価値はある。

 


同じランクの精油で優雅なお風呂にするには、ジャスミンネロリ(オレンジフラワー)、カモミール・ローマンなどがある。それぞれ少しずつ効果も違うが、リラックスしたければ好きな香りを選べばいい。
より手頃に香りのお風呂を楽しみたい人は、やはり定番のラベンダー。肌への刺激もなく、安心して使える。

気をつけなければいけないのは、肌を痛めたり、作用が強すぎたりして、入浴用に適さない種類の植物もあるので、ボトルの注意書きはチェックが必要だ。


さて、2 話目の今回、なぜ天然香料にこだわるか、である。


鼻から嗅いで安らぎを得る、というだけなら、天然、調合にかかわらず、好きな香りでいいので、その点はベッドフレグランスと同じ。
でも、入浴時には香料のもうひとつの道すじ、皮膚吸収がある。お湯に入れた精油は、肌からしみこんで体内に入る。だから、精油中のさまざまな成分が、直接身体に作用する。それは、活用したほうがいいと思わない?
お風呂の目的は身体を洗うためだけではないはず。懐かしいゆず湯やしょうぶ湯も趣(おもむき)があっていい。うんと、楽しむこと。
一生懸命仕事すればするほど、休息の時間は価値のあるものになり、充実した人生となる。

ああー、お風呂に入りたい。


ここのところ忙しくて、夜が白々とあけるまで家に帰れない。朝シャワーを浴びてとびだし、帰っては顔を洗うだけでベッドに倒れこむ毎日。一段落した今夜こそ、ゆっくりお風呂に入ろう。
こんなとき、私の選ぶのはヒノキ・オイル。そのまま数滴いれてもいいが、肌が滑らかになるので30gの重層も一緒にお湯に溶かす。木の香りのなかで、のびのびと手足を伸ばし、目をつぶって恍惚のため息をつくだろう。太古、先祖が森の中で暮らしていた時代の、細胞の記憶をたどりながら・・・。



2002/04 satori wrote

 

 

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