パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

ヘリオトロープの香り Heliotropium arborescens L.,heliotropine

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ヘリオトロープの花

春の花

濃い紫のヘリオトロープ。通勤途中に通りかかる植え込みには、春の草花が次々と咲いている。
少し前にはラッパスイセンクリスマスローズ、パンジーなどだったのが、最近ヘリオトロープミヤコワスレのようなブルーの菊が仲間入りした。鉢で育てた苗を、すきますきまに移植しているようだ。
 
春があっという間に押し寄せてくる。
 
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ヘリオトロープの香り

ヘリオトロープは甘く粉っぽい、少しバニラを思わせる匂いがする。
 
バニリンの合成途中で発見された甘い香気成分は、ヘリオトロープに似た香りということで、ヘリオトロピンと命名された」と学校で昔に習った。
 
また、この「ヘリオトロピン」の香りはリラックス効果があり、眠りの質を向上させるという。
 
ヘリオトロピンの香りは、洗い立ての乾いたシーツからもほんのりする。お母さんの匂いを思い起こさせたり、幸福な家庭の一場面、懐かしさと暖かさが癒し効果もあるだろう。
 
 
粉っぽいとは一般的によく知られた香調だと思っていたが、つい先日
「この粉っぽい、パウダリーな香りってどんな香り?」と同世代の人に聞かれた。
「例えば、白粉(おしろい)のような香りよ」と説明したら「なるほど」と言っていた。
しかし若い人にはむしろ、おしろいはわかりにくいかもしれない。ベビーパウダーのような香りと言ってもよいだろう。
 
 
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ヘリオトロープの香水 

 
夏目漱石の「三四郎」は叙情的な表現が美しく、言葉のエッセンスをちりばめた日常が淡々と綴られている小説である。
この「三四郎」のなかで、想い人の美禰子が白いハンカチにつけていた香水の名が「ヘリオトロープ」。日本に輸入された初期の香水のひとつと言われている。
彼にとってはリラックスするよりもむしろ、心を乱す香りであったかもしれない。
 
 
 
 
 
 
 
 
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