パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

辰砂の茶碗

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辰砂(しんしゃ、cinnabar)とは本来、鉱物の硫化水銀(HgS)である。

赤い塊の結晶で、中国の辰州で産出されたことからこう呼ばれた。

焼き物の「辰砂(しんしゃ)」は、この鉱物を使うわけではないようだが、色合いからこのように呼ばれるらしい。

 

 

母は毎朝何十年も「続きお薄」というお手前で、お茶を二服(二杯)をたてる。

これは母の気に入りの辰砂で、秋のこの時期はこの茶碗と、昔タイに行った時に買い求めた思い出の茶碗「スンコロク?」の替茶碗を使う。

 

どちらも美術品というわけではないが、温かみがあり、普段に使うのには勝手がよい。

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朝、時間のある時は私もお相伴にあずかる。
甘い干菓子をひとつまみと、ほろ苦い抹茶が頭をすっきりとさせる。

84歳の母の若さの秘訣はここにあるのかも・・・・。

 

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「辰砂について」リーフレットより 福田祐太郎作

古くは中国の明朝から始まり、清朝で再生を極め、もっとも珍重された辰砂は、その色がらが牛血紅、あるいは鶏血紅と呼ばれ、西洋に伝わってはルビー紅として称賛されたものです。辰砂は今日でも、陶芸家の最高のあこがれであり、その釉薬は秘密とされ、また焼成に重大な秘訣があるものですが、それゆえに、伝説的なまぼろしのいろと言えます、戦前本場中国の辰砂をつぶさにして感銘をうけた作者は陶工の生涯を、その辰砂にかけて、今日に至りました。

 

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