パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

枇杷の花,ビワ Eriobotrya japonica

新宿御苑の枇杷の木

枇杷の花の香り

 

新宿御苑の温室近く、芝生の中に一本のビワの木がある。

きまぐれに道を外れて歩きながら、そのビワの木に向かっていくと、ふんわりと甘い香りが漂ってくる。

 

そうか、もう花が咲いているのだな。

 

 

枇杷の花

 

冬に咲く花

 
ビワの花は毛布にくるまれて、寒気の中そっと顔をだす。
こんな寒さに向かって咲くっていうのはどういう理由なのだろう。
 
他の花が咲き終わって、競争相手が少なくなったから?
遅咲き、という本来の語源とは違うけれども、遅く咲くというメリットもあるに違いない。
 
 

ビワの香気成分

 
香りはバニラに例えた方がわかりやすいかもしれないが、
ふんわりと粉っぽく、しかし鼻の奥が収斂(しゅうれん)するような香りは、ヘリオトロピン(heliotropine)とかアニシルアセテート(anisyl acetate)とか思い起こさせる。
 
というか、ヘリオトロピンやアニシルアセテートをかぐとビワの花も思い出す、という構図かな。
 
 
毎年、ビワの花の甘い香りをかぐのはなぜかよく晴れた日。
暖かそうな蕾の塊りの印象と相まって、「小春日和(こはるびより)」という言葉が合う花である。
 
 

 

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