桜の花の時期も終わりに近づき、小さな青い「さくらんぼ」が実を結び始めると、早くも初夏という感じがする。
「チェリーの香り」というと、ドクターペッパーという飲み物を思い出す。
アメリカ的でジャンクなイメージだ。
ここに使われるチェリー・フレーバーは甘い香り。
杏仁豆腐の匂いでもある、「ベンズアルデヒド」という香料が中心になっている。
日本のさくらんぼ、しかも生の果実はもっと爽やかな香りである。
甘さが強くても、フレッシュな酸味によってバランスがとれている。
フレーバーのチェリーの、あのベタ甘さとはずいぶん違う。
「さくら」つながりでいえば、桜餅も甘い香りがする。
あのふんわりした匂いは、塩漬けにしたオオシマザクラの葉の中にできるクマリンという成分である。
このクマリンにバラの香りを混ぜて、爽やかなグリーンの香りで薄めると、桜の花の香りになる。
こうして桜の部位によって香りが違う一方、別の植物なのに同じ匂いがしたりする。
杏仁豆腐の原料はアンズの種子の仁(じん) から得られる。
サクラと同じバラ科植物には「ウメ」「イチゴ」「ナシ」「アンズ」などがあり、美しい花と果実ができる。
共通の匂いがするし、特有の匂いがある。
それは、成分の共有と割合によるものだ。