今日、新宿御苑の温室でフジバカマの鉢植えを見た。
入口の所に2-3の絶滅危惧種の植物と一緒に置いてあったのだ。
「ああ、フジバカマだ・・・」
足早に通り過ぎようと通った時に、思わぬ甘い香りが漂っているのでびっくりした。
思わず近づいて香りを吸う。
生花の状態でフジバカマがこんなにいい香りがするとは思わなかった。
今まで何度も野外や切り花でフジバカマの花を見て香りを確認したつもりであったが、これといって特徴的な匂いが感じられなかったのだ。
乾燥させるとクマリンという桜餅の匂いの成分ができて甘い粉っぽい香りがする。
なので、古来匂い袋などに入れたそうである。
昔は日本国中に自生していたのであるが、河川の開発などで数が激減し絶滅危惧種になっているそうだ。
普段目にする切り花や植栽されているのは、フジバカマの本種ではなく園芸品種や雑種だったのだろう。
園芸種はフジバカマとヒヨドリバナなどが交配したものだという。
ヒヨドリバナは花の色が白く、形はフジバカマとよく似ている。
葉の形が違う。フジバカマは上の写真のように葉が3つにわかれるので、両者はよく見れば分かるはずだが、雑種になると判別が難しいと思う。
光源氏の使者として玉鬘(たまかずら)を訪れた夕霧が、歌とともに御簾(みす)の下から1本の藤袴をさしだす。
「おなじ野の露にやつるる藤袴あわれはかけよかごとばかりも」
花の香りを知れば、この歌の意味も深まろうというものである。