パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

桂(カツラ)の葉はしょうゆの匂い,Cercidiphyllum japonicum

桂の木の葉は醤油のにおい

「桂(かつら)の木の枯葉は甘辛い、しょうゆの匂いがするんですよ」   

 


半年以上前になるだろうか。生徒さんがビニール袋にカツラの落ち葉をたくさん入れて持ってきてくれた。なるほど、パリパリに乾いた落ち葉からは、ほんのりあまじょっぱいようなにおいがする。
  
彼女の家のお庭には、お母様が丹精をこめた香料植物が植えてある。ときどき、色々な花や素材を持ってきてくれるのである。
 
そういえば、新宿御苑の池のほとりに大きな桂の木があったはず。いずれ見に行こう、、、と思いつつ忘れていた。

 

スプラウトカフェさくら坂

通勤路にて

 
10月になり、すっかり涼しくなった。ある日、ふと1本の樹が目に留まった。ここはよく通るかかる道。
 
春、桜の時期は満開の花でにぎわって、この木には気がつかなかったのだけれども、遠くから樹勢と木肌を見て『桂の木では?』とピンと来るところがあり、近寄ってみた。

 

 

 

桂の木の木肌

 

やはり、桂の木だ。
 調べると、桂の木にキャラメルのような甘い香りがあるということは割に知られているらしい。

 

 

 

桂の木の葉

甘い香りマルトール  


剪定された後に近くを通ると、切り口から出た成分が揮発して匂ったり、葉が枯れるにつれ、香りが生成されるという。
 
この成分はマルトール(Maltol)である。マルトールは、綿菓子の香りのする香料で、香水にもよく使う。
 落ち葉を拾って手の中で崩してみる。葉そのものの香りよりも、木の傍を歩いていて、あるかなきかに香ってくるほうがよくわかると思う。
 
 

 

アークヒルズ裏の桜並木、さくら坂

クマリンの匂い

 
このあたりは桜並木が続いているので、あたりには桜の落ち葉もいっぱい。カサコソと積もる落ち葉を踏みしめて歩くと、桜の葉のクマリン(Coumarine)の優しい香りも漂ってくる。
  
満開の桜並木を思い出しながら、紅葉の並木を歩く。
わずか半年でもたくさんのことがあった。
 『自分はどこへ吹かれていくのだろうか・・・』などと感傷的になるのも秋の空気のなせるわざか。
 冬もまだなのに、春が待ち遠しく思える朝なのである。
 
 
 

フランス TV番組に出演します。

Sur la piste des senteurs - Japon.jpgのサムネール画像

フランスのテレビ番組「Sur la piste des senteurs - Japon」(邦題「香りが導く!ニッポンの魅力」)で、調香師 大澤さとりが香りについてお話しします。

フランスのCATV/衛星放送チャンネルUSHUAÏA TV、世界3大ネットワークの1つTV5MONDEにて、12月に放送予定です!

 
 
 
 
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