温室のパパイヤが豊作だ。
実際にパパイヤの実の生(な)り方を間近で見るのはこの時が初めて。
花も満開だ。
果実の集団の上のほうを見ると、ちいさな黄色い花が幹にはりつくように固まって咲いている。
つまり、下から上へと実がついていくようである。
下のほうの実が先に熟して黄色いことからもわかる。
バナナは逆に上から下へ花が咲き実が下へ生っていく。
パパイヤは中央、南アメリカ原産の植物で、今でこそスーパーで普通に売られているが昔の日本では珍しい果物であった。
私が最初に食べたのはまだ6歳の時、ハワイに旅行に行った時である。始めてみる二つに割られた柔らかい黄色い果肉は、一口食べてみると香りに特有の癖がありとても食べられたものではなかった。
おそらく家族全員がひと匙しか口を付けなかったと思う。
その後しばらくして、現地の知人から箱いっぱいのパパイヤが家に届いたときも、母はどうしたらいいか困っていたのをぼんやり覚えている。
今思うと、あの南国の果物をどうやって通関したのかなと思う。
やがてホテルやレストランなどでも普通に出されるようになり、レモンをかけると臭みが気にならないうえに、食べなれてくにつれおいしく感じるようになった。
滑らかな果肉感と複雑な味わい・・・。甘味の中にあるほのかな青臭さがかえってやみつきになり、また食べたい、と思わせるような魅力となった。
パパイヤの香りをフレグランスに入れることはあまりないが、フレーバーで使われる。
そのときも単独ではなく、ほかのパイナップル、ピーチ、グレープフルーツ等と合わせて癖を和らげるようである。
香りは爽やかなリナロールが中心で、ピーチやマンゴーにもある果肉感のあるラクトン類、エステルのカプロエート類、オキサイド類、固有の成分としてはイソチオチアネートがあることがわかっている。