パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

池之端藪そば,天ざる,SOBA,Buckwheat

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たまたま上野池之端界隈に用事があって出かけた帰り、ものめずらしくあたりを見回しながら裏通りを歩いてみる。
 
と、そこには藪そば(やぶそば)の暖簾(のれん)が。
 
まだ12時には少し時間がる。
一人でお蕎麦やさんに入るのもためらうものがあり、一度は通り過ぎるも、
店の入り口の風情にどことなく惹かれ、引き返す。
 
「このあたりには、あまり来ることもないし、せっかくだから・・・」
と、小腹もすいていることもあり入ってみることにした。
 
 
 
 
天ざるが大好きで、入る前から「天ざる」モード。
これに決めていた。
 
4人がけの席に通されるが、さほど広くない店内ゆえ、昼時に一人では申し訳ないなあと思っていたところ、続いてご年配の二人連れが入ってきた。
 
「相席いいですか?」と聞かれ、「はいどうぞ」もちろん。
 
 
あとからもう一人お連れ様が入っていらして、やっぱり三人とも天ざるをご注文。
 
先に、板わさとお酒を頼んでいる。
 
へえ、なんか、粋なおじいちゃま達。
 
この雰囲気、上野池之端に来たって言う感じ・・・。
 
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『手前のこじゃれた木の箱はなんだろう?』
 
お尋ねしたところ、のりが入っているのだそうだ。
興味津々、ふたをあけて見せてもらう。
 
浅い上の段は焼き海苔が数枚。
 
下の段に小さな炭が入っていて、焼きのりがパリッとしたままいただける。
箱の横にあいている細長い模様は、酸素の通気孔のようだ。
 
他のお店の海苔箱?は、火種部分が引き出しになっているらしいが、ここのは2段重ね。
 
上段の浅い箱を取り外し、中をのぞくと、皆いっせいに覗き込む。
底に見える小さな丸い真鍮(しんちゅう)のお皿には、燃え残りの灰が少し残っている。
 
へええ!こういう仕組みが面白いなあ。
 
「香りがいいから一枚食べてご覧よ」
 
 
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天ざる到着。
あら~。想像していたのと違ってびっくり。
 
天ぷらはえびのかき揚げで、丸いボール状になっており、天かすがたっぷり乗っている。
そういえば、昔、雑誌で見たことがあるような。ここ、あの藪そばかあ。
 
伏せたざるの上には少なめの茶ソバ。
『この量ならもう一枚いけちゃいそうだな。。フフ』
箸を割りながらワクワク。
 
ゆずの香り。
つゆは濃い目。辛い。
 
相席さん曰く、
「落語にあるように、汁はどっぷりつけないで、ソバの先をちょっとつけるもんだ」
「ここ池之端の藪そばと、神田と浅草の3店舗は親戚なんだよ」
「今日は、去年火事で焼けちゃった神田藪そばの開店祝いに行ってきたんだけど、混んでいて入れなかったから、久しぶりにこっちに来た」
「いつもは浅草の藪そばに行くね」
「ほとんど毎日、昼はそば」
 
などと藪そばの常連さんらしく、いろいろと教えてくださる。
 
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話がはずんで、「なんのお仕事していらっしゃるんですか?」
と伺ったところ、三人で顔を見合わせて、
「なんのお仕事だって、ワハハハハ・・・」
と笑われたので、
会長と呼ばれていた人はよっぽど顔の知られたひとだったのだろう。
 
「財界」の表紙にでもなる人なのかもね。
 
 
 
 
子供の頃はうどんの方が好きだったけど、年とともにソバが好きになってきた。
 
もうちょっと大人になってご隠居さんになったら、昼からお酒と板わさを頼みたいものである。
 
 
 
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