パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

冬の到来

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冬の到来

 

今朝から急に気温が下がり、冬の到来を感じる。

寒いのは辛いし、風は冷たくて痛い。
だから、冬が近づいて来ると少し憂鬱な気持ちになる。
そんなときこそ、寒い頃に出会った楽しい思い出を記憶から取り出してみる。

 

 

例えば。

みぞれまじりの雪の日。靴下まで濡れて、足先は痺れてしまう。ここまではちょっと嫌な思い出。

でも。
家にたどり着き、コートのしずくを払いながら大急ぎで靴を脱ぎ、キッチンでお湯を沸かす。部屋も暖まってくる頃、たっぷりのココアをカップに入れて、少しづつ手の先も感覚がもどってくる。甘い匂いを胸いっぱい嗅ぐ。
窓の外を眺めながら、帰り道の辛さを「もう過ぎたこと」として味わう。ここからは至福の時。

 

それから他に。
冷たい朝に、まだ静かなパリの街に出て歩いたこと。息が白くて、気持ちが弾んだ。
冬、流れ星をみるために、窓を開けたまま夜中まで待っていた時のこと。「たくさん落ちるって聞いたのに」4時間待って、たったひとつ見れた時の興奮。
きっと、まだある。

風邪をひいてやだな、寒いと肩が凝って辛いな、でもその時、必ず少しはいいこともあったはずなんだ。

 

「あーやだな」
と思う瞬間に、似たような時期に出あった楽しかった体験に取り換えてしまう。そのために、嬉しかったことをできるだけたくさん覚えておく。大きなサプライズでなくてもいい。何か、見つけよう。

冬に備えて、リスが木の実を蓄えるように。

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