パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

イリス アイリス オリス ニオイアヤメ IRISS

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ローズやジャスミンの天然香料が高額なのはよく知られているが、もっとも高価な香料はイリスである。

イリスはアヤメの仲間で、日本ではおもに観賞用として栽培されるが、香料用には、地中海沿岸地方原産のニオイイリスを使う。

 花や葉、地上に出ている部分を使う他の天然香料と違い、イリスは根茎から採るため、生育に時間がかかる。さらに、3年間乾燥させて貯蔵・熟成させるので、採油まで6?7年はかかる。そこから何段階もの抽出法で純度を上げた最高級のものは、手間と時間と採油率の少なさから、1Kgで1千万する。シャネルが19番(のパルファン)で使っているといわれるものだ。

同等品を私もグラースで分けてもらい、アトリエの冷蔵庫に保管している。訪れた人にその話をするとみな興味を示すので香りをみせるのだが・・・。ものすごくいい匂いがするに違いないという期待からか、一般の人はみな「あれ?」という顔をする。

もちろん私たちにとっては宝石のようにすばらしい匂いなのだが、花らしいというより粉っぽく、すみれ様の、乾いた木のような、そして暖かい香りだ。

同じ香水の処方の中で、イリスの代わりに、その主成分である合成のイロンに置き換えて調合してみると、そのふくらみとパワー、なめらかさが全く違う。質のよい、上品な、しなやかで、光沢がある感じに仕上がる。

ちょっと見は似ていそうで、化繊のセーターと一等級のカシミアほど違う。生でかぐより、処方に入れた時のほうがよりその効果がはっきりするようだ。

シャネルの28 LA PAUSAもイリスの香りでいい香水だ。比べると、エルメスのHiris(イリス)はとてもコスメティックに感じられる。

 

花事典 イリス、オリス、アイリス:アヤメ科 アヤメ属  学名:Iris sanguinea
 
 
 
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