シャネルの5番を有名にした理由の一つに、合成香料アルデヒドがそれまでの常識に比べて多量に使用され、それが効果的で新しい香調を生み出したからだ。
この匂いグループは、脂っこいというか、ワックスっぽいというか、アイロンの焼けた感じのようなのとか、とにかく、単独ではあまりよいにおいとは言えない。とくに、アルデヒドC-11 レン (C-11 undecylen)を授業で見せるときは、いつも換気に注意する。以前、気分が悪くなった生徒がいたから。
レンの臭いは、お父さんのマクラカバーのにおいと言う人もいる。
ところが、いくつかを組み合わせて、処方の中に微量入れると、トップに暖かさとか華やかさがでる。(多量といっても、それまでに比べて10倍という意味で、全体から見れば微量。1/1000くらい)
いい匂いとは言えないようなものでも、組合せと配合量によって、全体を引き立て、時には甘く、時にはシャープにすることができる。
シャネルの5番が出た1921年以降は、フローラルとアルデヒドの組合せがたくさん発売された。ランバンのアルページュも、アルデヒドタイプの双璧と言われている。
1960-70年あたりにも再び流行がくる。カレーシュ、カランドル、リブゴーシュはアルデヒド3兄弟と言われ、コールドクリームの香りにもよくつかわれた。
私の好きな、ニナリッチのカプリッチは、今はもう売っていないが、アルデヒドタイプだ。
興味のある方はさらに読んでください。化学を知っている人には当たり前でつまらないだろうし、知らない人には面白くないだろうから。
アルデヒド(アルデハイドともいう)は、脂肪族アルデヒド(R-CHO)と、芳香族アルデヒド(Ar-CHO)、(テルペン系アルデヒドなど)と大きく分けられて、香水のアルデハイドタイプと呼ばれるものは、とくに脂肪族アルデヒドの香調を持つものである。
脂肪族アルデヒドは、構造が直鎖で、炭素がずらずらと電車のように一直線に並んでいる。炭素の数によって、アルデヒドC-10,C?11,C?12と呼ばれる。
C-C-C-C-C-C-C-C-C-C-CHO こんな感じ。
ときどき、連結部分の手が一本ではなくて2本の時がある。
-C-C=C-C-C-C-C-C-C-CHO 見たいな感じ。 そうすると、匂いが強くなる。
Cが奇数と偶数でにおいは振り子のように振れると言う人もいるが、そうでもないと思う。
アルデヒドは、「なんとかアルデヒド」でなければ、スペルの最後が -al で終わっているのが多い。helional,lilial,lyral など。-olで終わるのはアルコール類。geraniol nerol など。
他に、昔は、いわゆるアルデヒド、ソーコールドアルデヒドのピーチアルデヒドやココナツアルデヒドなんかも言われたが、今は γ-undecalactoneとか、ラクトンで呼ばれている。