パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

働く。

 

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「働く。」社会で羽ばたくあなたへ 日野原 重明

 

 

日野原先生は、99歳になられる今も現役の医師として働いておられる。
やさしい、暖かいお人柄がオーラとなってにじみ出ている方だ。
 
2度ほどお話させていただいたことがあるが、15年たった今の写真を見ても若々しく、ほとんどお変わりない。
 
これは、長いこと面倒を見てくださっている顧問弁護士の先生に、「これを読みなさい」と戴いた本だ。ただの法律相談ではなく、仕事との向き合い方、生き方についても、いつも学ばせて戴いている。
 
「働く」というタイトルのこの本は、これから職業を選ぼうとする若い人たちに対して書かれたものだ。先生の生きてきた体験から得た「働くということ」を、若い年代の人との対談を通じて、易しく語りかけている。
 
頭ごなしにこうだ、というのではなく、孫の話をよく聞いてやって、噛んで含めるようにわかりやすく書いている。
今は、近くにおじいちゃんのような人と触れあう機会の少ない人も多いだろう。もし年長の人にこんな風にニコニコして話しかけられたら、きっとなんでも心を開いてしまうに違いない。
 
だいたい、親と言うものは感情的になって、子供に真意を聞いてもらえなかったりするものだ。
若いひとだけでなく、これから何かを伝えたいと思う年配の人も、読んだらきっとためになると思う。
 
私が特に感銘をうけたところを抜粋。
 
「適職や天職がはじめからどこかにあるわけではありません。ー中略ー もしあなたが、どこかを探していれば適職や天職がふいに見つかると思っているのだとしたら、その誤った見通しをすぐにでも捨てることです。そうして、目の前のことにじっくりと取り組んでみてください」(働く,2010年,p77)
 
才能についても書かれている。環境が才能を育てると言うくだりで、
「そんな適度に厳しい環境を、どうしたらつくりだせるのでしょうか。手間をかけずにそれを作りだす方法を、一つあげておきましょう。目の前にある仕事に真剣に取り組むこと、その果てしない繰り返しに耐えることです」(同著:p78)
 
「生涯を賭ける甲斐があったと思えるものを、わたしは決して自分一人ではなく、多くの出会いに助けられながら、広大無辺の砂地の中から少しずつ浮き彫りにしてきたのです。百年は、わたしに必要な時間だったのだと思います」(同著:p128)
 

これらの言葉は、先生の半分くらいの道のりを生きてきた私が、過去を振り返り、「なるほどここまでその通りだったのだから」、そしてゆく先を遠望して、「これからもきっとそうなのだろう」と、私には山登りの道しるべの様に感じられたのだった。
 
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