パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

自分らしく生きる school

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5年前、スクールの生徒さんに向けてこんな記事を書いていました。




【ぺんぺん草でいいじゃない】


「世界でたった一つの花」という歌が流行るずっとずっと前、私が悩み多き世代だったころの話です。

「ユリには百合の、バラにはバラの美しさがあるのです」と、その先生は話されました。 


その言葉に、私は思わず反論しました。


「でも先生、私はぺんぺん草なんです。バラやユリじゃないんです!」

若い頃は自分を価値のない人間だと思ったりしがち。いえ、それは歳は関係ないのかもしれません。

  

しかし先生はニコニコしながら、


「あなたはぺんぺん草でいいのよ。私(先生)の大学時代の教授は、ずっと苔(こけ)を研究されていて、苔を語るときには活き活きと情熱を持っていらした。苔だって、ぺんぺん草だって、愛している人にとっては素晴らしいものなのよ。」

今でも忘れられない言葉です。

 

『わたしはぺんぺん草でいい・・?』
予想外の回答にちょっと拍子抜けした気分でしたが、しばらくしてとても気持ちが軽くなりました。

その時に私は「いいえ、あなたはバラのような人」という言葉を期待していたのかもしれません。

 

でも、もし美しい花に例えられたとしても、それは私にとって結局のところ解決にならなかったでしょう。
『いいえ、やっぱり私は雑草にすぎない・・・』

とくよくよし続けたと思うのです。


私には、ナズナ(ぺんぺん草のこと)はつまらない草で、バラが素晴らしいという価値観があったのです。それこそがまったくつまらない考え方ですね。 

『私はナズナでもいいんだ、ナズナも素晴らしいのだ...』
肩に入った力が抜け、視界が広がったような気がしました。

 

どんな植物も人間も、偏った価値観で優劣をつけるものではなく、自分が自分らしく生きるということが最も尊いのだということを学ばせていただきました。



その先生はすでに鬼籍に入られましたが、当時は、今の私と同じくらいの年でいらっしゃいました。

その言葉を懐かしく思い出し、またこのような気持ちで、皆さんと香りを学んでいきたいと思います。


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