パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

鈴蘭の香り 君影草

 

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鈴蘭は愛らしい姿と、爽やかな香りで女性に好まれ、人気がある花だ。

日本にもともと自生する鈴蘭は、葉っぱより低く咲くので、葉の蔭に隠れて目立たない。
うつむき加減に開く、ベルのような花の姿とあいまって、なんとなく控えめな印象がまた、日本人好みなのかもしれない。

名前も、君影草なんて、いかにも奥ゆかしい。

 

この鈴蘭は、新宿御苑を歩いていて、道端で偶然発見した。
葉より高く咲けばドイツスズラン、これは、ちょっと低いから君影草だと思うが、微妙なところだ。

思わず這いつくばって匂いを嗅ぐ。
爽やかなグリーンと、花の甘さは、少しツンとするアニマリックなインドールの匂い。

 

ドイツスズランは渡来した品種で、花の位置が高く遠目にも目立つ。
今はドイツスズランが全国に広がっているらしい。

勢力図に負けて、いまや日本のスズランは北海道位にしか自生していないという話も聞く。

 

昔、家の庭にもスズランが植わっていて、テラスに沿って帯状に、どんどん葉が茂っていった。
5月には白い花が咲き、秋になると、ほおずきの中身のような赤い実をつける。

花は可愛いが、この赤い実は猛毒を持つ。
それに、鈴蘭は可憐な姿に似合わず旺盛な繁殖力である。

 

そのころ読んだ本のどこかに、なんかの短歌に詠われていた。
「油断していたら、いつの間にか庭にのさばって、押しかけ女房みたいにずうずうしい花だ」
というような内容で・・・。

ちょっとユーモラスでおかしかった。
今、思い出したが、思い出せない。
どの本に書いてあったか、本棚をひっくり返したが見つからない。

誰か教えて~。


 

 

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フランスでは、5月1日は鈴蘭祭り。フランス語でミュゲ、muguetといい、香水業界では通常フランス語を使う。

鈴蘭をリリーと呼ぶ人もいるが、それはリリーオブバレーを省略したもので、百合ではない。百合はやはりフランス語でリスという。

 

英語のリリーオブバレー(Lily of valley)は、谷間のユリと訳されるが、これはもともとはバーリーという小高い丘を指すという説もある。

確かに、谷間のような日影より、日当たりのよいところの方が葉もわさわさと茂って花つきがよいようだ。
うちの庭でも、一番良い場所に植わっていたっけ。


 

でも、北海道には鈴蘭の谷があるという話も聞く。
そこに入ると、鈴蘭の香りで眠りこんでしまい、帰ってこれなくなっるという伝説だ。

谷と丘、どうなんだろう?

 

▶ 植物事典 ユリ科スズラン属  ドイツスズラン 独逸鈴蘭 学名:Convallaria majalis

                      キミカゲソウ 君影草 学名 Convallaria keiskei
 

 

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