春の香り沈丁花
花より先に、香りが届く。
沈丁花はそんな花だ。
歩いていると遠くから、春の夜を裂いて、高いトーンで鋭く香ってくる。つい数日前まで、濃い葉の色に覆われて、地味な赤いつぼみに気付かなかったのに。毎年、繰り返す驚き。
しかし、実はこれはアトリエのウィンドウの中。月曜日に切り花で飾った花が、暖かい室内で、露地より一足先に咲いたもの。 香りは、やはり戸外で咲いたものより弱い
肉厚の花びらは裏が赤で中が白い。白さの中に、ラメの様な光が見える。香りも、グリーンフローラルの中に、キラキラした甘さがある。
沈丁花の香料
沈丁花の天然香料は採油されていない。香気成分を分析し、他の香料を組み立てて調合する。
香りの中心は、シトロネロールなどローズ系の成分と、それを和らげるジャスミン系のフローラルが少し
トップの爽快さにシトラスや、 少し、メタリックなオキサイドの香りもする。
沈丁花という名
「沈丁花」という名前の由来は、沈香(じんこう)の香りがして、丁子(クローブ)の花蕾の形をしているから、と言われるが、一般的に、花から香木(こうぼく)の匂いは感じられないだろう。
全然ないとは言わないが、わずかにグアイヤコールのようなウッディスパイシーが下(底)のほうにあるだけで、やはり香りのタイプとしてはフローラルグリーンだ
香木もジンチョウゲ科
「沈香木(じんこうぼく)」という香道で使われる香木は、東南アジアに原生する、同じジンチョウゲ科でアキラリア属の木に傷がついて、バクテリアがコロニーをつくり、樹脂化したもの。
たぶん、同じ科であるということも関係して、命名されたのかもしれない
▶ 植物事典 沈丁花 ジンチョウゲ科 ジンチョウゲ属 学名 :Daphne odora