パルファン サトリの香り紀行

調香師大沢さとりが写真でつづる photo essay

沈丁花(ジンチョウゲ)の香り ダフネ

100212沈丁花1.jpg

春の香り沈丁花

 

花より先に、香りが届く。

沈丁花はそんな花だ。

 

歩いていると遠くから、春の夜を裂いて、高いトーンで鋭く香ってくる。つい数日前まで、濃い葉の色に覆われて、地味な赤いつぼみに気付かなかったのに。毎年、繰り返す驚き。 

 

しかし、実はこれはアトリエのウィンドウの中。月曜日に切り花で飾った花が、暖かい室内で、露地より一足先に咲いたもの。 香りは、やはり戸外で咲いたものより弱い

 

肉厚の花びらは裏が赤で中が白い。白さの中に、ラメの様な光が見える。香りも、グリーンフローラルの中に、キラキラした甘さがある。

 

 100212沈丁花.jpg

 沈丁花の香料

 

沈丁花の天然香料は採油されていない。香気成分を分析し、他の香料を組み立てて調合する。

香りの中心は、シトロネロールなどローズ系の成分と、それを和らげるジャスミン系のフローラルが少し

トップの爽快さにシトラスや、 少し、メタリックなオキサイドの香りもする。

 

100212沈丁花3.jpg

 

沈丁花という名

沈丁花」という名前の由来は、沈香(じんこう)の香りがして、丁子(クローブ)の花蕾の形をしているから、と言われるが、一般的に、花から香木(こうぼく)の匂いは感じられないだろう。

 

全然ないとは言わないが、わずかにグアイヤコールのようなウッディスパイシーが下(底)のほうにあるだけで、やはり香りのタイプとしてはフローラルグリーン

 

香木もジンチョウゲ

沈香木(じんこうぼく)」という香道で使われる香木は、東南アジアに原生する、同じジンチョウゲ科でアキラリア属の木に傷がついて、バクテリアがコロニーをつくり、樹脂化したもの。

 

たぶん、同じ科であるということも関係して、命名されたのかもしれない

 

▶ 植物事典 沈丁花 ジンチョウゲ科 ジンチョウゲ属  学名 :Daphne odora

 

 

 

 

 

Copyright © PARFUM SATORI All Rights Reserved.