パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

白花沈丁花の匂い シロバナジンチョウゲ:Daphne

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白い沈丁花の香り

不思議なにおい

朝10時頃、明治通りを足早に歩いていると、突然フックのある香りに遭遇。

「んー、何の香りだっけ?」

『そういえば、確かこのあたりに白いジンチョウゲがあったはず』と思い出して、来た道を2~3m引き返す。
 
「フックがある」というのは鼻に引っかかるというか、特徴のあるというような意味によく使うが、この時はむしろ沈丁花らしくない香りだったので、「あれっ?」と違和感を感じたのである。
 

ホワイトフローラル系の香気

 
毎年その春一番ジンチョウゲは、夜暗い道を歩いていると気がつくものだ。
その闇の中のジンチョウゲは、爽やかなグリーンフローラルで、シトラスっぽいローズ系メタリックの香りがする。
 

それが今朝のジンチョウゲは、ジャスミンやチュベローズに通じる、やや重いラクトン様の匂いがした。

 

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沈丁花の香気成分

近寄って香りを吸う。花の中心からは、確かにあの紅花種のジンチョウゲと同じ、爽やかなグリーンフローラルがキンと匂い立つ。
ローズのシトロネロールや、オキサイド系のキラキラした匂いだ。

普通なら軽い香りが遠くまで届きそうなものだが・・・。それなのに離れた場所で感じたのは、ボディ感のあるホワイトフローラル。
きっと、軽い香りは空中に揮散して消えてしまい、重い香りだけが風に乗ってやってきたのだろう。それとも日中の紫外線で、軽い芳香分子は壊れてしまったのかも。

そういえば、花の中で一番遠くまで香りが届くというキンモクセイも、主な芳香性分は、γーデカラクトンやβーヨノンという、決して軽い香りではないから。そういうこともあるのかもと改めて実感したのであった。
花の香りの不思議。



 
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