パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

百合の花粉

 

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なぜ、今までゆりの香りについて書かなかったのか、不思議なくらい。
百合は、強い匂いがする。

 

夏は切り花の種類が少なく、暑さのため花もちも悪い。
そんな中で、ユリは貴重な花材である。

写真は園芸品種カサブランカの系統の大きなユリ。
一筋ピンクが入っている。

カサブランカは、Casa Balanca白い家の意味だが、
この花はイングリットバーグマン主演の映画「カサブランカ」に由来するらしい。

ゆったりとした花が1本に五輪以上はついていて、下の方から次々とよく咲く。

 

本当は、私は絶対に雄しべは取りたくないのだ。
白いユリの中央に、濃いオレンジの雄しべは絶妙のバランスで美しさを引き立てていると思う。
大柄な花をキュッと引き締めている。

しかし、この花粉は、うっかり白い洋服についたりすると悲惨だ。
水をつけて洗おうとすると、どんどん広がってしまうし、黄色く染まってなかなか落ちない。
花粉には、油分が含まれているようである。

 

花が咲いたばかりは、シベの先についた「やく(花粉の塊)」が固く、粉が散りにくいが
時間とともにやくはふくらんできて、粉っぽくなってくる。

そのため、被害に合わないためには、
咲いたらすぐに、ピンセットで「やく」の部分だけをつまんでとってしまう。

残念なことに、お店のように人の出入りのあるところでは
このしべを必ずとらなくてはならない。

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しべを取った後の、間の抜けた姿は、やや興ざめだが、
一方で、しべを取ることによって花もちはよくなる。

萎れた花をそのままにしておくと弱るので、花がらはすぐに切る。

生殖活動にかかわることは、命を削るほどの仕事なのだろう。
樹木でも、花の後は休まなければならないし、
多くの植物が結実とともに、役目を果たしたと思うのか枯れてしまうように。

 
 

下の花を切ると全体のバランスが変わるので、
向きを変え、丈をつめてまた活けなおす。

一番上のつぼみは、少し小ぶりだが、切り詰めて一輪ざしに低く入れる。


それでも最後まで開いてくれるのでうれしい。
花が咲き切るように、満足して生ききりたいと思う。

 

 

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▶ 植物事典  ユリ科ユリ属  学名:Lilium 'Casa Blanca'(カサブランカ) 

 

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