パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

食と香り

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ああー、こんな寒い日に冷たいビールなんて・・・でもおいしそう。

「食」は、五感の全てを使う。

当然のことながら、味覚。これには、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つの基本味がある。

しかし、おいしさに関与するのは味覚だけでは不十分だ。

 

まず、視覚。目から訴えかける、食物の色どりや器の盛り付け、みずみずしさやふわふわ感などは、食欲に対して大きく影響する。 例えばグラスにしたたる水滴を見るだけで、喉がなる。

 

次に聴覚。調理中のじゅうじゅうと言う音や、ぐつぐつ煮える音は、おいしさの期待感をます。口の中では、りんごをほおばる時にするシャリッとした音、炒ったナッツを噛んだ時のカリカリとしたクリスピーな音が快感だ。

 

そして、触覚も大切。熱いものは熱く、冷たいものはより冷たく。温度によって、よりおいしさを感じる。グミのグニグニ感やジュンサイのぬるぬる、うどんのシコシコなど歯触りも、旨さを増す要素。

入れ歯などで上顎が覆われると、味だけでなく食感も鈍くなり、楽しみが半減するそうだ。

 

最後に嗅覚。もし、においがわからなければ、味もわからない。風邪をひいて鼻がきかなくなったときは、何を食べてもおいしくない。ためしに、鼻をつまんでジュースを飲んでみるといい。オレンジジュースもりんごジュースも、みんな同じ味に思える。嗅覚がなければまるで白黒の世界。生きる活力がかなり失われそうだ。

匂いはおいしさを増すかどうか以前の、味を感じるかどうかに関わっている。

 

逆に、何もかもがくさくて食べられないという病気もあるそうだ。嗅覚が異常に昂進して、ものの匂いがどんどん濃く強く感じられてしまうらしい。有効な治療法も見つかっているようだが、その間は悲劇だと思う。

以前に、どんな麗しい花の匂いも、濃すぎれば悪臭になるし、ひどい臭いもうんと薄まると心地よく感じる濃度もある、という話をしたことがあるが、それと似ている。

 

生きるための本能である以上に、食べることは楽しい。これだけ食文化が発達するのも、やはり五感の全てを使って「味わう」ことができるからだろう。

さらに、胃袋や栄養価を満たすだけでなく、心づくしのおもてなしをしてくれる人がいて、食卓をともにする相手がいればなにより、素晴らしい。

こんな豊かな食生活のできる国にいることや、作ってくれた人たちに心から感謝。(強引にまとめると。。。)

 

 

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喰切り江ぐち丸鍋

 

 

 

 

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