パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

松茸ごはん /Tricholoma matsutake

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松茸ご飯の炊けるときの匂いが大好き。
だから、家で炊く。
 
もう秋も終わりの、名残り惜しいある夜の献立は、
この年の最後の松茸ご飯に、湯豆腐と水ナスの漬物。
 
 
松茸のお料理方法はいろいろあって、焼いても、天ぷらであげてももちろんおいしい。
でも食の好みというのは子供の頃に作られるのだろう。
やっぱり、松茸はご飯が一番であると思う。
 
 
まだ幼い頃、台所に立つ母のそばでチョロチョロしながら、出来上がるのが待ち遠しかったのを覚えている。
ウラジロ(シダ)を敷いた籠の中には、松茸が盛られていて、
母は、笠の開いた、形の悪い大きなものを選んで、ご飯用にサクサク切り分けていく。
 
(籠の中でも、小さい締まったものは別にして、土瓶蒸しにしたリ網で焼いていたようだが、子供の口には入らなかったのか、そちらはあまり味の記憶がない。)
 
どっさりと松茸を入れてご飯を炊くと、
いい匂いが盛大に家の中に広がり、呼ばなくても兄たちが食堂に集まってきた。
 
 
 
また中学高校の頃は、クラブ活動を終えて、おなかペコペコで帰ってきた日に、
家の玄関を開けて松茸ご飯の匂いがすると、いっぺんに疲れが吹き飛んだものである。
 
 
春は筍ご飯、豆ごはん、秋は松茸ご飯など。
季節の炊き込みご飯は、そんな情景とあいまって、思い出を作っている。
 
 
旬の食べ物、それが日本の情緒を育てたのではないかと思う。
 
今は出来上がった炊き込みご飯がパックに詰められていて、簡単に買えるようになった。
とても便利になったと思う。
 
けど、子供のころからこれを食べていたら、大人になってその味を懐かしく思うのかな?って考える。
 
 
松茸の香りは1-オクテン-3-オール (1-octen-3-ol) 、と言ってしまっては残念。
 
食の思い出は味や香りだけじゃなくて、「プロセス」が一緒になっているのだと思う。
 
 
季節感を大切にしたい。
 
 
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 湧水を思わせるシトラスの透明感のあるフレッシュな香り。
   オードパルファン 苔清水(こけしみず) 
 
 
 
 
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