はなひらく,Hana Hiraku ④香水のネーミング
香りを作るときに、イメージが先ですか?名前?それとも香料から決めていくのですか?
そう聞かれることがよくある。
それはどれも正しくて、その時々によるし、両方が追いかけ追い越しながら香りができていくこともある。
「ハナヒラク」は、仮の名前があり、香りができ、後から正式な名前が付いた。
そして香りは大きく変更されたのである。
そして香りは大きく変更されたのである。
最初の名前は「エパヌイール(épanouir、咲かせる、輝かせる)。
この名前にもちょっとしたエピソードがあって、
数年前、フランスに滞在しているときに
「仕事をしていて何が一番楽しいのか?」
という話題になり、
「お客様と香りのお話ししているでしょう、ムエットについた私の香水をかいだ瞬間に、相手の顔がぱっと明るくなるの、その表情でいろんなことが報われるのよ」
と説明しながら、一言で何かぴったりの言葉がないかって頭の中で探していて、
「そう、エパヌイール!」
という言葉が私の口から出てきたときに、
その人が、
「エパヌイールか!いい言葉だ」
と、懐かしい名前を思い出したような表情をしたのを見て、
私にとっても特別なことばとなり記憶に残った。
そして、新しい作品のテーマは「木の花」。
春から夏にかけて、いろんな種類の木が次々と蕾を付け、白い花がどんどん開いていく。
香りを作りながら、顔が花のように輝く表情と「エパヌイール」という言葉が重なって思い浮かんだ。
香水の仮の名前は「エパヌイール」
でも、それはフランス語。
音はかわいいけど少し覚えにくく、意味が伝わりにくい。
やはり最後には日本語で名前を付けたくて、10も20も候補が挙がっては消えた。
しっくりくる言葉が浮かばないまま、エパヌイールの香りはできていく。
5月には発売する予定なのに。
5月には発売する予定なのに。
2月になった。
毎朝の一服、抹茶を点てようとしていると、母が自作の茶杓(ちゃしゃく)を奥から出してきた。
竹の茶杓入れには「花開」と書いてある。
「これ、何と読むの?」
「ハナヒラク」
はなひらく。。。
何回もつぶやいてみる。
音に希望があって、明るくていいなあ。
それに、エパヌイールとも通じるし。
花咲く、花開く、どっちにしよう。
凝り過ぎていなくて素直な感じ。
こうして、香りに名前がついた。
香水のラベルもできて、試作のボトルに貼ってみる。
香水のラベルもできて、試作のボトルに貼ってみる。
名前がつくと、それまでなんかもやもやしたものが、しっかりとした形を持つ、人格を(香格?)を持つような感じがする。
正式名がついてみると、一度は完成したと思った香りなのに、、、これでは線が華奢(きゃしゃ)すぎる。
言霊(ことだま)というのかな。
どうしても、納得のいくものにしたくて、作り直すことにした。
なぜならばこれは私の香りだから。
そうしてハナヒラクは、予定から5か月遅れた10月15日に世に出ることとなった。
朴(ホオ)の木: 学名:Magnolia obovate 日本特産種
大木になると幹が直径1メートル、高さが30メートルにもなる落葉高木。朴(ホオ)の木の大きな葉に、味噌や餅を包んで焼いた朴葉みそ、朴葉餅や、皿として使うなど、日本では昔から生活に根ざした歴史があります。5月頃にクリームホワイトの20センチにもなる大きな花を枝先に咲かせ、その香りは風に乗って遠くまで届きます。