亜麻色の髪の乙女・・・。
小さい頃に聞いた懐かしいこの歌、どんな色の髪なんだろうと思っていた。
亜麻という植物の繊維は通気性としなやかさに優れ、高級なランジェリーなどの生地となる。麻とは同属ではない。
洋服のタグで、日本語表記ではどちらも「麻」になるが、「Linen(リネン)」と書けるのは亜麻の方。
麻は、ラミーと呼ばれる。
この繊維は、金色を帯びており、亜麻色はもともと金髪のことを形容したが、黄味がかった茶色のエクルベージュも亜麻色とされ、転じて栗色の髪をも指したようだ。
漆黒の艶のある髪が、戦前の日本女性の美の一典型だとしたら、
戦後になって欧米文化が入ってきたこともあり、
若い男性にとってのマドンナ像が変わっていったのかもしれない。
白いリネンのワンピースを着て、栗色の髪をなびかせる・・・
「亜麻色の髪の乙女」という歌には、
もう少し明るい、洋風な女性を想像させる。
そしてタイトルに「娘」、ではなくて「乙女」を選んだところにもロマンチズムを感じる。
ともあれ、亜麻というのは繊維としてつかわれるほか、アマニ油と言って、食用や塗料に使われる、
とても有用な植物である。
日本では、北海道の麻生町で盛んに織られていたそうだ。
花が散ると、鞘(さや)の中に亜麻の種がいくつもできる。ちょうど、ソバの実のようだ。
かの地には、亜麻でできたソバもあるらしい。
青い花は、例えば勿忘草(わすれなぐさ)、アジサイ、ヒヤシンス、スミレ、デルフィニウム、と、
あげていけば案外あるように思うが、黄色や白に比べ、天然界では圧倒的に少ない。
なよなよとした茎の先に優しい青の花がぱっちりと咲く。
風に揺られて、おとめチックだ。
▶ 植物事典 亜麻 アマ科 アマ属 学名:Linum usitatissimum