ツルボ(蔓穂)が咲くのを待っていた。
夏は暑いうえに花が少ない時期で、新宿御苑から自然と足が遠のいてしまう。
夏休みの終わり、ようやく秋の気配が訪れたころ、その花が咲き始める。
妖精に会いにいく。
細い茎の上に花穂が立って、つぼみの頃はつくしのような、ラベンダーのような形。
それが下の方から、順に開いてくると、
なんかこう、赤ちゃんが手を広げたような、パチパチっとした小さな花が、ひと房にたくさんついて、それが可愛い。
ツルボは、花の咲き始めはヒヤシンスのような青臭いグリーンハニーの香りだけど、
日がたつと粉っぽい香りになる。
香水にトップミドルラストで「におい立ち」の変化があるように?
花の香りが咲き始めから散りぎわまで一様だなんてのは、思い込みなだけ。
花の香りが咲き始めから散りぎわまで一様だなんてのは、思い込みなだけ。
人でも花でもその一面を、大きなキャラクターだけ切り取ったところで、その人のすべてを表すわけじゃない。
1回かぎり、見知っただけではただのゆきずり。
馴染みになるってことが、知るためには大切なことなんだけど。
馴染みになるってことが、知るためには大切なことなんだけど。
ツルボの群生地の、周りの芝生は今ちょうど刈り終わったばかり。
ヒザをついて、青々とした草の香りの中で、小さな花の写真を撮る。
充分撮ったところで満足して立ち上がると、刈った草の液で白いパンツのひざから下が緑に染まっている。
久しぶりの御苑散歩、お転婆(てんば)をしたような、ものすごく愉快な気分。
心の中で、ひとりクスクス笑っている。