香水、テュエリーミュグレーのエンジェルはもともとブルーの液体であるが、アトリエに長く置いているうちに緑に変色した。
なぜ本来青い香水が緑色に変化するかというと、
中に入っている成分のマルトールやバニリンが、光によって変色して黄色くなるから。青に黄色を足して緑色になったというわけ。
バニリンは、バニラ豆の香り成分で、もともと天然界に存在する。上質のバニラビーンズは、表面に白い粉がふいている。これは自然に析出したバニリンである。
1858年に発見され、1874年には合成された。アイスクリームなどお菓子のフレーバーとして広く使われているし、香水にも昔から入っている。ゲランのジッキーは、初めてバニリンを使用した香水として知られている。
さらに近年ではグルマン系の流行により、配合が多くなっている。
最近の香水は、あまり天然物(てんねんぶつ)を使っていないので、ほぼ無色透明だ。使っていても、脱色した天然物だったりもする。そういう香水は、もともとが無色透明なので、きれいなピンクやブルーで着色することができる。
しかし、香料の中には、紫外線によって黄色や赤に変色するものがある。これを「色やけ」というが、必ずしも匂いが悪くなったわけではない。しかし、きれいな色を生かすために、最近はできるだけ変色しない香料に置き換えたりする。
バニリンは類似のエチルバニリンに代替されることがある。これも色焼けしないわけではないが、匂いが強い分、配合量を控えめにできるので、結果変色の度合いが減る。
一方で、バニリンなどのそれらの香料は「色やけする」ということを除けば、とても良い素材だったりするし、完全な代替品がなく、なかなか同じ香りを保つことは難しい。
たとえばインドール( indol)は、白い花の甘さを出す良い素材だが、赤くなる。indoflor cyrstalは、類似と言われるが、まったくフローラルにはならない。
こういう素材の入った香水も、箱に入れて保管していれば、変色は防げるし香料の劣化も遅くなる。ただ、変色と変臭とは必ずしも一致しない。
古いアンティークの香水は、天然物を多用しているのでもともと琥珀色をしており、変色も目立たない。
vanillin : 4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド