パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

エレベーター、そして残り香 Sillage

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夜、住まいについてエレベーターに乗ると、ほのかに香水の残り香が漂っていた。

男性用だ。今風だけど安っぽくない。温かみのある、乾いたウッディバルサムが残っている。もう消えてしまったトップは、多分シャープなハーバルとマリン。

「どんな人がつけていただろう?」と想像してみる。


まずは私にとって最も好ましいと思われる男性像を次々とイメージしてみる。横顔はこんな感じ、声はあんな感じ。そして、私がその人に恋をしたと仮定すると、今ここで包まれている香りは、とってもいい匂いのような気がする。


しかしふと、「もし、がっかりするような人がつけていたら・・・。」

と、映像を思い浮かべる前に目的階に到着した。残念な気分になる前に降りられてよかった。


ほんの10秒に満たない短い時間に、香りの向こうに何人ものシルエットに会ったような気がする。香りそのものの善し悪しとは別に、誰がつけているかってことも重要。




シア(ヤ)ージュというのは、もともと船の航跡(こうせき)に由来する。そこから、過ぎ去った後にたなびく香りのことをさす。だから、エレベーターの香りは、「たなびく」というよりもむしろ、「ただよう」。

イメージとしては浮木と言ったほうがしっくりしそうだ。




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