イギリスのミステリーロマン「レベッカ」は少女時代の愛読書である。
無名のヒロインが、小説の舞台になる大邸宅を初めて訪れるとき、このシャクナゲが登場する。
彼女が屋敷の門を抜けると「真っ赤なシャクナゲの花が壁のようにそそり立つ」プロムナードが出迎える。玄関までの道を車で走り抜ける間の、女主人公の不吉な予感を表す情景描写だ。そしてまた、シャクナゲは小説を支配するもうひとりのヒロイン・レベッカの亡霊をも象徴している。
古い翻訳では確かにシャクナゲ(石楠花)だったのだが、30年ぶりに新しい本を買ったところ、シャクナゲでなく真っ赤なツツジと書いてある。
何しろとても印象に残っていたシーンなので、再度旧訳本を古書店で買い読みなおしてみると、やはり古い翻訳ではシャクナゲだった。
ツツジはどちらかと言えば親しみやすい花で、シャクナゲのような圧迫感はない。
シャクナゲはひとまとまりに固まって咲くせいか、巨大な一つの花にも見える。
だから原作者のデュ・モーリアは、やはりシャクナゲをイメージしたに違いないと、私は思ってしまうのだ。
どちらもツツジ科の植物だし、学名や英名などとても混同しやすい。
遠目では椿かと思った。
5mにはなる背の高いシャクナゲの花。
この時期の新宿御苑は、他にもピンクや白などがいたるところに咲いている。
当たっているかどうかわからないが、ツツジ➤サツキ➤シャクナゲの順に花が大きいように思う。