パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

菖蒲香、あやめ、紫、Iris

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「菖蒲香(あやめこう)」は、香道の夏の香組(お香の組み合わせ)である。

5種類の香木のうち、目的となる1つの香りを予め試し聞きしておき、次に出る5つのうちの何番目にこれが出てくるかを判ずる(当てる)。

 

「五月雨に池のまこもの水ましていつれあやめと引きそわつらふ」源頼政

これは、源平盛衰記の一節から由来する。

鳥羽院の女房の一人、菖蒲御前(あやめごぜん)という美しい女性がどれかを当てることになぞらえたゲームである。

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話せば長いことなので、はしょって説明する。

似たような衣装を着た女房たちの中から、源頼政は恋する菖蒲御前を引き当てるように鳥羽院命ぜられるが、ちょっと垣間見ただけの菖蒲御前を当てるのは難しく、はずせば恥をかく。

選ぶ代わりにこの歌を院に奉る、という機転によって窮地を脱し、めでたく御前とめあうことを許されたという故事による。

はっきりみることもかなわぬ御簾(みす)の中の美女に思慕の念を抱き、こうした貴人の気まぐれに翻弄される家来も大変だ。

 

お香の会では、ただ希少な香木を焚いて聞く(かぐこと)だけでなく、こうして遊びや文学の要素を取り入れ、存分に楽しむよう趣向を凝らす。

 

文化と言うのはそれなりの教養があってより楽しむことができる。
ただお金持ちと言うだけでは道楽はできない。

 

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The water around Makomo in a pond is increased by early-summer rain. Therefore, it is hard to tell which one is Mme.Ayame.

 

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