日曜日の午後、所用の帰り。陽気に誘われて靖国通りを淡路町から神保町へ、久しぶりにひと駅歩いてみた。
いつもより人出が多いのは千鳥が淵の桜を見て、九段下から流れてきた人たちだろうか。
お休みの日でも、書店街のいくつかはあいている。買い出すときりがないから近寄らないようにしよう・・・と思いつつ、時代小説専門店の看板を見て引き込まれるように中へ。
藤沢周平、池波正太郎、司馬遼太郎、隆慶一郎氏らはみな故人ゆえ、作品はすべて繰り返し読んでしまったので、宮城谷昌光や飯嶋和一の新しい作品はないかとチェック。
ややっ、五味康祐があるではないか。
『大学生のころ好きでよく読んだっけ。』
この人の文体は読みにくいせいか、今はあまりお店に置いてない。懐かしくて、つい1冊。
次々現れる古書店の誘惑に勝てず、ハシゴを始めてしまう。日本美術の古い月刊誌や、新刊では高くて買えなかった事典、専門書など「ああーっ××」「うわーっ○○」と内心はしゃぎまくる。
古本独特のにおいが一層興奮をあおる。(湿ったカビとひなたとバルサミックなアルモアズとパインとパッチョンが混ざったようなにおい)
求めるアイテムは違っても、行動パターンは子供時代と変わらない。道草をしつつ、買い込んだ本で荷物がどんどん重くなる。いいかげん最後の店を出ると、一本の小ぶりの桜の木に出あった。
白い花の下を通ると爽やかな甘い香りがして、我に帰る。
香りは、夢の国にも連れて行ってくれるが、引き戻してもくれるのだった。
(香料の解説 ARMOISE:キク科の植物 PIN:松 PACHONE:合成香料)
写真:アトリエの書庫