パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

マルセイユまで‐5  香料を求めて

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マルセイユまで‐5  香料を求めて

 


事前にそれらの会社のリストをもらっていたので、彼がその中からいくつかアポをとってくれているはずだが。

 

 

ようやく、ママ(彼の)に会って車の使用許可を頂き、キーをもらうと、おもむろに彼は公衆電話へ向かう。

 


なんと!今!会社に電話をかけ始めているではないか・・。40分ほどして電話ボックスから出てくると、「うーん、2件くらいアポが取れたんだけど、これからランチを食べて行くとなると、帰りのTGVに間に合わないかもしれないな」などとのたまう。

すでに1時近く。「ここから1時間弱のところに、コートダジュール有数のリゾート地があって、そこへ行くならちょうどいいけど?。」

 

 

『だからぁ、このときは東京からですよ、飛行機12時間+空港までの数時間をかけてパリに来て、早朝からさらにTGV3時間かけてここまで物を探しに来てんのに、どーいうことなのよっ!』などとは全然言わないで、こういう成り行きを許した自分の不明を恥じ何事も修行と言い聞かせ、この時点で、このマルセイユ行きは観光と割り切る。

 

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マルセイユ南東20kmほどのカシスの海岸にて、アシスタントのR子ちゃんは、裸足になり波打ち際で、「わー、センセイー、コートダジュールの海ですよー」とすっかり楽しげに遊んでいる。

その後、お土産物屋で南仏のプリントのバッグを買ってあげ、若い子と遊ぶおじさまの気持ちをちょっぴり味わう。

 

帰り道も車が迷ったりしてヒヤヒヤしながらようやく駅まで到着。

 

汽車を待つ時間、コーヒーショップで、「就職できない理由について、いかに自分が正しくて、社会が間違っているか」という彼の恨み話を聞いてあげる。

 

「じゃー、僕がまたコンタクトしておくから」ということで別れた。

フランス経済がなぜ低迷しているのか、彼を見ていて、少し理解できた気がした。


まあ、その後、リストをもとに、直接いくつかの香料会社とも交渉することができたし、何事も飛び込んでみなければわからない。

 

 

徒手空拳時代、もう昔のことである。

 

 

 

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その後、彼はノルマンジーの企業に就職が決まったと聞いた。

 

結果はどうあれ、彼がいたからマルセイユに行く気にもなったし、よい経験ができて今は感謝している。


元気でいることを心から祈って。

 

 

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