最近季節外れの桜が秋に咲いたとニュースになっている。
「桜は春に咲くもの・・・」
私もそう思っていた。
しかし本来、桜は秋に咲いていたという説がある。
ネパールに「ヒマラヤザクラ」という、秋に咲く野生種の桜がある。
いま日本にある桜の源流をたどると、ここにたどり着くようだ。
もともと桜が生育していたネパールの温暖な地域から、北上するにつれ気候は変化していく。
中国から日本に来るころには、四季のある気候環境で生き残るため、
桜は冬眠という形で越冬するようになった。
落葉し休眠した桜は、冬を越して暖かくなるとともに開花時期を迎える。
しかし秋の初めに葉が台風などで早く落ちてしまうと、十分な休眠の準備ができない。
そのまま暖かい秋の日がつづくと、桜は春が来たと勘違いして咲いてしまう。
これを「狂い咲き」と言ったりする。
しかし一方で「秋に咲くのが普通なのだ」ともいわれる。
「もともとの母国であるネパールでは秋に咲いていたのだから、これは本来の姿に帰った先祖がえりである」
この仮説を立てているのが東京農大の研究室で、とても面白い記事だった。
「 日本のサクラとネパールのサクラの遺伝的な特性を知るため、染色体を調べてみると、16個の染色体数をもつ野生種であることが解りました。・・・」農大HP
http://www.nodai.ac.jp/web_journal/adventure/vol5.html
日本の数百万年前の地層から、桜の化石が出ているということだから、太古には渡ってきていたようだ。
しかし桜が日本で愛でられるようになったのは平安の頃。
万葉集では奈良時代まで、花見と言えば梅を指していたのが、9世紀ころから盛んに桜の歌を詠むようになる。
桜は交配も盛んで、突然変異もおこしやすい。
そのためさまざまな品種が生まれている。
花見といえば「ソメイヨシノ」を思い浮かべるが、これは19世紀末に特定された新しい桜だ。
ジュウガツザクラやカンザクラといった、もともと秋・冬に咲く桜もある。
今日載せた4枚の写真は、新宿御苑のジュウガツザクラ。
秋枯れの風景の中に、あれっと思うようなたたずまいだ。
花弁は春のようにはらはらとは散らず、いつの間にかしぼんでしまう。
どことなく侘しさを感じる桜で、春のうきうきした感じとはちょっと違う。
桜はヒマラヤからネパール、中国、日本と、長い長い旅の果てに日本に来て「文化」を咲かせている。
人も人生の秋に花を咲かせてもいいんじゃないかな・・・。
ちなみに、「秋桜」とはコスモスのことで、これはキク科植物なので桜とは無関係だ。