
サクラはぱっと咲いてぱっと散る、というイメージがあるが、サクラのさく季節は思いがけず長い。
秋に咲く十月桜(ジュウガツザクラ)は別としても、2月に咲きはじめる寒桜(カンザクラ)から始まり、3月河津桜(カワズザクラ)、4月に染井吉野(ソメイヨシノ)、そして4月下旬のぽってりした八重桜がフィナーレというところだろうか。
また日本は南北に長いので、少しずつ前線に沿って移動すればもっと長く見ることができるだろう。

2か月前は啓翁桜(ケイオウザクラ)がアトリエに春をもたらしてくれた。
いまは大ぶりの備前(びぜん)の花入れに、この八重桜を投げ入れて飾っている。
アトリエに来られる海外からのお客様が、特に喜んでくださるようである。

近くの地下鉄の駅前に、ときどき生花店のワゴンが出ている。
この日、たまたま通りかかり、お店の若いお兄さんと掛け合いながら、八重桜のまだつぼみの多いものを選んで一枝買ってきた。

活ける前に花のつき方や枝ぶりをみて、完成形を頭に描く。
このままでは枝が大きすぎて活けづらいので、3つに分けることにする。
こんなふうにあれこれ考えながら下ごしらえをするのも楽しいものである。
いつも思うのは、桜の若い枝は独特の縞模様があって、木肌がきれい。

枝の切り口は、水を上げる導管(どうかん)が多いほうがよいので、細い枝のところでなくて、もとの太い部分を切りわけるのがよい。
あとは切り口を縦に割っておく。
水揚げはお湯につけたり叩いたり、ミョウバンを付けたりいろいろな方法があるのだが、すでにお花屋さんでよく水揚げがされているので、この程度でも充分である。

濃いぽってりとした花は子供じみていて、一時期はあまり好きではなかったのだが、最近はまた「これもいいなあ」と思っている。
大学生の時に女子大生という人種があまり好きでなかったように、子供のときは子供っぽいものが疎(うと)ましく思えたりしたのだろうか。
そう考えると、自分もちょっと大人になったのかなあと思うこの頃である。

"日本人にとっての「さくら」を作りたい"という思いから誕生した、パルファンサトリのさくら-Sakura-。日本の美意識を香りに託し、丁寧に処方を組みました。明るくみずみずしい花の甘さが、うすべに色のふんわりパウダリーに変化する、匂い袋のような和の花の香りです。