桐と言えばむしろ、桐材として箪笥や、美術品の箱のほうが、よく知られているかもしれない。
花は実物より、家紋や花札の柄で、モチーフとしてよく目にする。
パリでも南仏でもいたるところで桐の花を見た。
とてもポピュラーな花なのに、フランスでは木材としては全く知られていない。
ヨーロッパでも、桐箱はデザイン的に優れていると、とても評価が高い。
日本の長い歴史の中で、
桐の箱は実用の美と、見た目の美を兼ね備えた箱として、
ブラッシュアップされてきたのだから当然と言えば当然。
用途によって木の組み方から、木の切り口をどこに見せて紐をどのようにかけるか、
文字の入れる場所まで、きちんと決めごとがあるのは、
美しいだけでなく合理的だからだ。
私の茶壷香水にも、桐の箱を使っている。
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桐は、湿気を通さず、割れや狂いが少なく、耐火性にすぐれている。
この特徴から、美術品を収納する箱として、古くから使われてきた。
日本では2000年の歴史があり、骨董界では箱そのものも重要で、
ふたの裏に鑑定の箱書でもあれば、中身の価値も上がる。
しかし、この箱がパウロニア、ポローニャの花と結びつくとは
フランスのみんなも知らなかった。
桐は成長の早い木である。
「日本では、女の子が生まれると桐の苗を庭に植え、
嫁入りのときにはその材木で箪笥(たんす)を作って持たせる習わしなの。」
「この箱は、この花の木から採る木材でできているのよ」
説明すると、へえーっとばかりにびっくりだった。