桐の花は高い所に咲く。
だから、花の匂いを知らない人が多い。
ここ、パリのルクサンブルグ公園は桐の林があり、紫の雲の様である。
日本では、こんなにいっぱいの桐の花を見たことがない。
紫の、思いのほか華やかな花だ。
空が青く光が強いから、よけいに発色がいいような気がする。
それに、あたり一面に匂いがたちこめている。
ウッディで、豆っぽいモソモソした甘い匂い。
東京では、一本だけポツンとはえていたりするので、それほど香りを感じない。
地面に落ちた花を、拾って匂いをみるくらい。
でも、ここは林の外まで匂いが流れてくる。
優しい花のにおいと言うより、癖になる匂い。
「変なニオイだと思わずクンクン嗅いでしまう」というようなたぐいだ。
グアイヤックとか、コスタスとかのように、植物のくせにアニマルなところがある。
なんとなく、懐かしいような・・・。
このときの桐はまだ葉をつけていないので、木陰は小さい。
強い日差しの中、人びとはベンチに腰掛け、おもいおもいに本を読んだり
サンドイッチを食べたり、ビールを飲んだり。
5月、桐の花はパリでも南仏でも、いたるところで見かけられる。
日本の伝統的な花のイメージが強く、
何度もこの時期に来ているのに、なぜか気がつかなくて、
フランスでこんなにポピュラーな花とは思わなかった。
花の時期は短い。
▶ 植物事典 桐(パウロニア) ゴマノハグサ科 キリ属 学名:Paulownia tomentosa