パルファン サトリの香り紀行

調香師大沢さとりが写真でつづる photo essay

香りの花 ホオノキ(朴ノ木)magnolia obovata

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朴(ホオ)ノ木の花、まさにこれぞ「肉厚の白い花」強香のホワイトフローラル。
 
花弁はわずかにアイボリーのかかった白で、花びらはぽってりと厚く、マットな表面にもかかわらず、内側から光り輝くようだ。
 
 
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遠くに見える巨木の上に白い花が点々と。
あれ?もう朴ノ木が咲いてる?まさか?
 
近寄るにつれて、甘い熟れたイチゴやメロンのようなフルーティー・ノートが漂ってくる。
非常に強い香り。
 
初夏の訪れの早さにびっくりする。
過去の朴ノ木の記事をみたら、やはり毎年5月の初め頃に書いている。
 
 
6月の雨の日に、誰もいないこの木の下で、坂村真民さんの「念ずれば花開く(めぐりあいのふしぎ)」を読みながら泣いていたこともある。2011年震災の年のことだ。
 
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本当に立派な大きな花。
完全に開花すると、直径は20センチくらいあると思う。
威風堂々(いふうどうどう)、花の中の王様と言った風情だ。
 
 
繊細(せんさい)さとはかけはなれているので、「好きではない」と言うひともいるが、好き嫌いとは別の次元で、これはこれで何か尊敬に値すると思う。
 
 
がっしりとした巨木の前に、思わずひれ伏したくなる・・自然界の奇跡を感じてしまうのだ。
 
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遠くまで匂ってくる香りはそんなわけでフルーティーな甘さ。
5年前にこの花をみたときは、パンピーオレンジ(昔、牛乳屋さんが配達してくれた)ような香り、と思ったものである。
 
マグノリア類の特徴的な、ミルクゴム調の香りは、フルーティに隠れている。
 
しかし、咲きかけのつぼみの花芯に近づいて嗅ぐと、メチルサリシレート(サリチル酸メチル)のような、湿布薬のような匂いもする。
 
 
 
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モクレン科 モクレン属 学名:Magnolia obovata thunb
 
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過去こんなに書いている。毎年同じようなことを書いているけど。。。
 
 
 



 
漂ってくる甘いフルーティーな匂い、なんだっけ・・・?そうそう、小さい頃飲んだ、「パンピーオレンジ」のにおいみたいだ。こんな大きい木でも、低い所に枝が降りて来ていて、いくつかの花を近くで嗅ぐことができる。蕾は、ゴムっぽいラクトニックな匂い。完全に咲くと、イチゴとチュベローズのカクテルのようにフレーバー的な甘さがある。みんな、寄ってきてニコニコしながら香りを吸っている。よく観察すると、ホオノキの下や、桜の木の下には、下草が生えていない。
セイタカアワダチソウもそうだが、朴の木も、根から発芽抑制物質を出し、他の植物が生えないようにする。見えない地下では、植物の覇権争いが行われているのだった。
 
 
 
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