パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

ユリの木 Liriodendron tulipifera メロナール  melonal

 130503ユリノキ3.jpg

 

新宿御苑のユリの木。

明治初期に植えられた樹齢140年になる巨樹は、40メートルはある。

葉の濃い緑の中に隠れ、同色のつぼみは目立たないが、よくみれば 木を覆うようにびっしりとついている。

花の根元のオレンジの線がアクセントになっている。
別名チューリップツリーとも言う。

 

130503ユリノキ.jpg

 

この木は蜜源植物で花の中心に甘い蜜を持つ。
そのため、大きく膨らんだ花はカラスのごちそうとなり、木の下には花のもとをかじられたつぼみが数多く落ちている。

 

しかしいくら食べられても大丈夫なくらいの花がついて、まるで「逆さシャンデリア」のようだ。

 

 130503ユリノキ2.jpg

  

その、落ちたばかりのきれいな花を選んで香りを嗅いでみる。

みずみずしい瓜のようなグリーン。爽やかである。


この香りを香料名で表すならばメロナール(melonal)。
メロナールはメロンというよりスイカに近い香りだ。

メロナールは強い香りで1%に希釈すると、クリーンでフレッシュな香りになる。キュウリ、メロン、スイカのような青い匂い。  

しかしこの香料を希釈せず嗅ぐと、グリーンの中心にいがらっぽいざらつきがある。

 

また、開いたユリの木の花はすっきりしているが、まだ固い蕾を割って、蕊の中心をよく嗅いでみると、希釈しないメロナールの特徴によく似た、収斂するような粉っぽさがある。
鼻の奥が少し痛い。

 

いい香りも濃すぎると不快だったりするのは、香料に限らないらしい。

 

 

 

Copyright © PARFUM SATORI All Rights Reserved.