新宿御苑のユリの木。
明治初期に植えられた樹齢140年になる巨樹は、40メートルはある。
葉の濃い緑の中に隠れ、同色のつぼみは目立たないが、よくみれば 木を覆うようにびっしりとついている。
花の根元のオレンジの線がアクセントになっている。
別名チューリップツリーとも言う。
この木は蜜源植物で花の中心に甘い蜜を持つ。
そのため、大きく膨らんだ花はカラスのごちそうとなり、木の下には花のもとをかじられたつぼみが数多く落ちている。
しかしいくら食べられても大丈夫なくらいの花がついて、まるで「逆さシャンデリア」のようだ。
その、落ちたばかりのきれいな花を選んで香りを嗅いでみる。
みずみずしい瓜のようなグリーン。爽やかである。
この香りを香料名で表すならばメロナール(melonal)。
メロナールはメロンというよりスイカに近い香りだ。
メロナールは強い香りで1%に希釈すると、クリーンでフレッシュな香りになる。キュウリ、メロン、スイカのような青い匂い。
しかしこの香料を希釈せず嗅ぐと、グリーンの中心にいがらっぽいざらつきがある。
また、開いたユリの木の花はすっきりしているが、まだ固い蕾を割って、蕊の中心をよく嗅いでみると、希釈しないメロナールの特徴によく似た、収斂するような粉っぽさがある。
鼻の奥が少し痛い。
いい香りも濃すぎると不快だったりするのは、香料に限らないらしい。