
クロモジ、黒文字の花。
毎年この時期になると、散歩の途中には必ず見に行って、蕾が咲くのはいまかいまかと心待ちにしている。
直径1センチに満たない小さな花の集まりだけれども、白いうぶげの生えた葉の若い緑が映えて、遠目でもよく目立つ。
過去のブログを見ると、決まって3月の半ばくらいである。花は季節をたがわない。
蝋のように透けて愛らしい花よりも、その材に芳香がある。
お茶席では、このクロモジの小枝を切ったものが主菓子(おもがし)につけられる。4寸ほどの長さのよい香りのする楊枝(ようじ)である。古田織部が始まりとも聞いているが定かではない。
また、料亭などでも食後にクロモジの小さな楊枝を出される。人前ではできないが、化粧室にも備えてあったりして、噛むと口中がさっぱりとする。
こうして乾したたクロモジは、ちょっと山椒のようなスパイシー感があるシトラスの香り。
生の枝葉の香気成分は、リナロールやバラの成分ゲラニオール、森林調のシネオールなど。スパイシー感もやはりある。樹皮の部分の芳香が強いようだ。
庭からちょっと小枝を手折って、樹皮をナイフで斜めにそぎ、毎朝の一服に添えれば風流なものだと思う。