パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

新宿御苑のビワ Eriobotrya japonica

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新宿御苑のビワの実

 

今年もまたビワの季節がやってきた。

新宿御苑のビワの木。
どうしたわけか、今年は大きな枇杷の木は不作。

 

枇杷の木

下は昨年の6月頃の枇杷の木。

震災後だったのに豊作で、無数になったビワの実をつつきに、10mはあるこの大きな枇杷の木にたくさんのカラスが群がっていた。

 

枇杷の花芽は春に出来るので、昨冬は今年の実の分の花が咲かなかったのだろう。

 

新宿御苑の枇杷の木

芝生にはえている2mくらいの小さなビワの木の方が豊作である。


小さい木の下に行くと、ビワの実の少し青くさく、アニスっぽい匂いがほのかに漂っている。


しかし近くによって果実のヘソあたりをかいでも、あのビワの皮をむいてかぶりついた時の涼しげな匂いはない。

 

よく見ると地面に落ちた熟れた実の果肉が割れて、それが甘い香りを放っていたのだった。

 

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枇杷の実の香気成分

 

カントキサールという香料がある。
柔らかなグリーンフローラルで、これをかぐとビワの実を思い出す。

 


さまざまなハウス物が出回って、果物に季節感が乏しくなったあとも、このビワだけは6月の一時だけ楽しめる味だと思っていたが・・・。

 

最近では高級果物店で冬あたりから目にするようになった。
普通に公園や庭になっているようなビワは、どこぞのおぼっちゃんのように綿にくるまれている。

病気のお見舞いに、大昔はパイ缶(パイップルの缶づめ)だったり、桐箱に入ったメロンだったが、みんなが豊かになってくると贅沢も極まって、逆にこんな庶民の食べ物まで特別な物に仕立てるらしい。

 

 

 

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