クリニャンクールの蚤の市は最近ではもう良いものがないと聞くので、ヴァンヴの蚤の市に行くことにした。
市は土日に開く。
ここの蚤の市はそれほど有名ではないが、前に来た時はもとT社のパフューマーU氏に道でばったりと会い、お互いに「なんであなたがここに?」みたいな顔をし合ったものである。
後で思い出したが、そのときはここまでバスに乗ってきたのだっけ。
今日はメトロの8番線でアンバリットまで出て、13番線に乗り換える。
この線は新しいせいか、ちょうど日本の地下鉄のようにホームと電車の間にゲートがある。
と思ったら、翌日乗った1番線もゲートがあったりして。
徐々にパリのメトロも近代化されているのだろう。
「次は○○駅」などという車内アナウンスも、以前はなかったし。
日本みたいにだんだん親切(媚びてる?)になってきたのかも。
例えば初日のカフェで、まず無料の水が出てきたのにはびっくりした。
どこでもではないけれど。
ちなみにこれはチョコレートではない。
刻印である。
結構気に入ったけど、これはすごく重たいので小さいのを一つ買った。
ま、そんなわけで土曜日の午前中はここを行ったり来たり。
ちょっと欲しいものがあったりしておこずかいを使ってしまう。
これは六分儀、店じまいの直前にみつけた。
とってもお値打ちだった。
船舶の天測航行用の道具である。
写真の向きとは逆に目盛を下にして、望遠鏡をのぞき鏡に目標点を映す。
太陽や星が何度になるかによって自分の位置を測る。
「始祖鳥記」(飯島和一)という小説の中で登場する、弁財船の老船長が使う。
これがあれば、陸地に頼らなくても外洋を航行できる。
地面に縛られない、鳥のように飛べる。
本を読んだ時からずっと、こんな風に小さいやつが欲しかったから嬉しかった。
これはテーピングのお礼に、測量をやっているT君にあげよう。
小さな市(いち)はいたるところで開かれる。
並べてあるほとんどがガラクタだけど、その時にピリっと惹かれるものがあったら買う。
その市を目指していくこともあるけど、たまたま通りがかって見つけることもある。
昔、モトピケやサンシュルピス寺院前で出会ったのもそんな蚤の市。
そういう時に、「どうしようかな?またあとで・・・」と思っていて逃すと、欲しいものに再びめぐり合うことはない。
だから、これだけは衝動買いをするのはやむを得ない。
その時は、「自分はこの金額だったら買いたい」というのがはっきりあるといい。
交渉はそれからで、向こうが言ってくる値段を、ただやみくもに「負けろ負けろ」と言っても、結局それが面白いだけで本当に欲しいものは手に入らない。
自分がこれでいいと思った値段で買ったら、損をしたも得をしたもないもんだ。
なんて、ほんの小銭程度だからそんな偉そうなことを言えるのだけど。