パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

三人の糸つむぎ女 グリム Brüder Grimm

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グリム童話に「三人の糸紡ぎ女」という物語がある。

新宿御苑千駄ヶ谷門をはいるとすぐ、とても大きなスズカケの木が三本あって、
私はいつもこの木に会うたびに、この「三人の糸紡ぎ女」を思い出すのだ。

                  Ψ Ψ Ψ

ある娘が王国のお后にみこまれ、王子のお嫁さん候補として糸紡ぎの試験を受けることになりました。
しかし怠け者の娘には糸を上手に紡ぐことができません。

 

三つの部屋にぎっしり詰まった麻を前にして途方に暮れている娘を、こっそり助けてくれたのがこの三人の糸紡ぎ女たちです。

一人目はおおきくて平べったい片足をしており、二人目は下くちびるが足もとまで垂れ下がり、三人目は片手の親指の幅が広くなっていました。

三人は力を合わせて山盛りの麻をあっという間に紡いでいきました。

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無事に糸紡ぎの試験に合格した娘は、結婚式にこの三人を招きます。
驚いた王子はこの異形の女たちに尋ねました。

「なぜそんなに足が広いのですか?」
「糸車を踏むからだよ」
「なぜそんなにくちびるが垂れ下がっているのですか?」
「糸をぬらすために舐めるからだよ」
「なぜそんなに指が太いのですか?」
「糸を指で撚(よ)るからだよ」

女たちが口々に言う言葉に、王子は考えました。
「それなら私の美しい花嫁には、金輪際(こんりんざい)糸紡ぎをさせないようにしよう」

こうして娘は王子と結婚した後、もう糸を紡がなくてもよくなりました。

                  Ψ Ψ Ψ

 

グリム童話は寓話であって訓話ではない。
すっきりしない話も多いのだが・・・。


この変わった形のスズカケの木はちょっとユーモラスで、大きな足の糸紡ぎ女のよう。
閉園後の新宿御苑、彼女たちは夜中にこっそり動き出しそうだ。

 

 

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