パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

ラ・フランス(洋梨)のかおり

 

 

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ラ・フランス洋梨)のかおり

 

洋梨は香りが良い。

 

 

 

日本の梨は、シャリシャリとした歯ごたえとみずみずしさがおいしさだが、ラ・フランスはとろける舌触りと口の中に広がる香りがこたえられない。その香りは、フルーティでありながら柔らかいフローラル。

 

ペア・ベースを作るときは、エチルアセテート、ヘキシルアセテートなどのフルーティノート(エステル)に、意外だがムスクを少し入れて果肉感をだす。このフルーティベースに、透明感のあるミュゲ系フローラルと合わせると、やわらかく優しい香水ができあがる。 (1964年に、香気成分のキーである、Ethyl-2ーcis-4-Dccadienoateが発見されている)


子供のころ梨と言えば、甘いが水気の少ない長十郎か、水気はあるが味の薄い二十世紀しかなかった。今は、両方の良さを備えたたくさんの日本の品種ができたが、基本的に形が丸くてシャリ感がある。

洋梨と言えば、油絵の中で見る変わった形の果物といった認識くらい。頂き物があっても、ぐにぐにとした柔らかさがそれまでの梨のイメージから遠く、キモチワルイといって、食べず嫌いだった。


その後、ラ・フランスという品種に出会い、たまたまチーズと一緒に食べてから好きになった。チーズの塩気でより果実の甘さが引きたつように思う。ねっとりした感じが、日本の梨より合う。不思議なもので、形もかわいらしく感じるようになった。

梨は、バラ科の植物である。
同じバラ科の梅はいい匂いだ。山桜もいいが、桃はにおいがほとんどない。

梨の花は切り花にしても風情があっていいものだが、そばによると生臭くて、いいにおいとは言えない。昔小説で読んだが、梨畑で斜面に真っ白にさく花はとてもきれいだそうだ。花は遠くから見るのがよいのだろう。

 

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