パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

ヤマザクラ 山桜 yamazakura

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ヤマザクラ(山桜)は花の時期が長いので、ソメイヨシノよりも少し遅くまで咲く。

花と葉が一緒に開くところに野趣があってよい。
時に葉の色は臙脂(えんじ)色をしているので華やかというより渋めである。

花びらもやや細くすっきりとして上品である。

 

中学生の頃に読んだ小説に、大実業家の老人が花柳界のひいきの名妓を指して、「おまえは山桜のようだね」と称賛するシーンがあった。染井吉野ソメイヨシノ)は品がないと彼は云う。

 

私はまだ幼くて、ソメイヨシノよりさらに華やかな、八重桜のようなぽってりと紅い桜が好きだったので、なぜ山桜がよいか理解できなかったが、今はよさがわかる。

何という本だったかも忘れてしまったが、印象に残る言葉だった。
やはりこのような好みは年を取ってからの趣味なのかもしれない。

 

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純白やピンク色の差した花びらなど、同じ木に咲く花でも変化がある。

 

オオシマザクラ、琴平など、ヤマザクラ系は匂いの良い系譜である。
神田にあるスルガダイニオイの並木道では、さわやかなグリーン系の香りが降り注ぐように薫る。

 

山桜は花をそばで嗅ぐことができないほど背が高くなるが、この新宿御苑の母子森にあるのはまだ若木で、すぐそばで鑑賞することができる。

 

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 山桜の樹皮はまた模様が面白く、印籠などの表面に使われる。
これもまた、若いころはいいと思わなかったが、ようやく興(おもしろ)みがわかるようになってきた。

樺(かば)細工というが、使われる樹皮は白樺などの樺類ではない。

 

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 きょうは青空もきれいでうららかな天気。

春もまっただ中である。

 

 

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