簡単レシピ!調のタイトルにしてみたが、いたってまじめである。
茶道で使うお茶は、普通の煎茶などの茶葉とは違い、碾(ひ)き臼で細かい粉に挽(ひ)いてある。
そのため湿気を吸いやすく、保管したままの状態でお茶をたてると、きれいに溶けないでダマができてしまう。
飲んだ後に舌につぶつぶと粉茶が残ったりすると美味しくないし、茶碗の底に残ったりするのも見苦しい。
そこで、茶濾しとか茶ぶるいとか呼ばれる道具でお茶を濾してから使う。
今回のお抹茶は、一保堂の雲門の昔を使ってみた。
濾すときは、網目の上の抹茶を刷毛などで掃(はら)うらしいのだが、うちでは昔からビー玉を使う。
本式なのかはしらないが、粉が飛び散らずにとてもいい。
母の家のは大きいサイズなのだが、アトリエでは邪魔にならない小さい缶を使っている。
2-3個のビー玉を抹茶と一緒に入れて缶の蓋をしめる。
軽く振る。
中でビー玉が踊るのが手ごたえでわかる。
ほんの十回ほど振った後、缶のふたをそっと開けると、すっかり抹茶の粉は下に落ちている。
濾し器の部分を取り外し、底にたまった抹茶をへらですくい、なつめや中次などのお茶を入れる入れ物の中に移す。
残った分は翌日まで冷蔵庫に入れてしまっておくこともある。
これはもちろん、水屋(みずや・お茶室の横にある下ごしらえをする場所)でする、いってみれば楽屋裏の作業。
缶は錆びてしまうので洗ってはならない。
きれいな布などでぬぐうだけでよい。
あとは、手前(てまえ)のとおりにお茶をたてれば、滑らかな味わいとなる。
家では昔から当たり前のように目にしていたので、気にも留めなかったのだが、調べてもこのことについてあまり書いていないので、はたして一般的なことなのかなあと疑問に思っている。
ひょっとしたら、「よそさまでそんな裏方の話をするもんじゃない」と母に叱られるかもしれない。