秋バラは香りがとてもクリーンだ。
形も引き締まっている。
春は暖かく水をぐんぐん吸って、花びらが伸びていくので大きく緩(ゆる)く咲くのだが、秋は朝晩がすずしく水揚げがゆっくりのため、花は小ぶりで形がパリッとしている。
大気のせいで、春バラには蒸れた甘さのある、少し生臭さを伴う青い香りがする。
まるで、春の女神に祝福された乙女の、胸の谷間から発散するあまずっぱい匂いのようである。
一方で秋のバラは、これからくる寒さに立ち向かう巡礼者さながらに厳(おごそ)かなたたずまい。
凛として寄せ付けない。
花の咲き方は環境で変わる。
どちらが好きかは、ひとそれぞれだ。